1:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:11:15.76 ID:qT/AyJQb0
いつの間にか、秋だ。
春が来て、桜に見惚れていたら雨が桜を流していって、晴れ上がったと思えば夏が来て、夏草に隠れるように暑さをやり過ごしていたら、秋が来ていた。
これは秋の一日。何も無い、ただの私とヴィーネの一日。
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2:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:14:13.91 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「風が冷たい」
ヴィーネ「そうね、もう秋だからね」
3:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:15:50.58 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「ガヴこそ、寒くなってきたらマフラーとか手袋するのよ」
ガヴリール「わかってるよ。私寒いの嫌いだし」
4:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:16:30.14 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「昔のあなたはどこに行ったのかしら」
ガヴリール「そんなやつは初めから居ない」
5:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:17:17.86 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「……」シュ~
ガヴリール「秋でよかったな。風が火照った顔を冷やしてくれる」
6:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:18:08.04 ID:qT/AyJQb0
もうすぐ夜が来る、そう感じるタイミングが日に日に早くなる。まだ赤く染まりきっていない夕空も、すぐに暗闇が覆い尽くしてしまうだろう。
ヴィーネ「何見てるの?」
7:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:18:59.75 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「にしても」
ガヴリール「秋ってなんでこんなに物悲しい気持ちになるんだろうな」
8:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:20:42.32 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「そうするとね、浮き足立ったような気持ちが街を流れる空気に変わって」
ヴィーネ「毎日がとっても騒がしい日々に感じるものなのよ」
9:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:22:02.96 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネが私の2、3歩分前を歩く。拗ねるとよくこうなるんだけど、今日は特段彼女を怒らせるようなことはしていない。してないよな?
早足になって、ヴィーネの服の袖を掴んだ。
ガヴリール「なんか怒ってる?」
10:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:24:13.07 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「じゃあはい、手袋外して」
ガヴリール「手、出して」
11:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:25:06.64 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「…夏、一緒に遊んだじゃない」
ヴィーネ「…楽しくなかった?」
12:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:26:24.71 ID:qT/AyJQb0
そんなバカなやり取りをしながら随分と坂道を登ってきた。振り返ると市街を眺望できる場所まで来ていることに気づいた。
ヴィーネ「あっ!」
13:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:27:42.98 ID:qT/AyJQb0
「お好きな席へどうぞ」
迎え入れてくれたのはちょうどいいくらいの暖房と、想像以上に若い店主と、紅茶の香り…ではなくキャラメルの香りだった。
店内は教室二つ分くらいの広さで、落ち着いた雰囲気の中に小粋なジャズがBGMとして流れている。先客はいないらしく、この空間を二人で独占する事に罪悪感を覚えてしまいそうだった。
14:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:28:42.41 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネ「これ!」
店内に入ってメニューをもらってヴィーネが指し示したのは、パンケーキだった。
15:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:29:29.01 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「パンケーキ、大きめと小さめがあるけれどどっちにする?」
ヴィーネ「お……小さめで」
16:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:31:35.66 ID:qT/AyJQb0
私は小さめパンケーキ、紅茶は京都祇園のやつ。
ヴィーネは大きめパンケーキ、紅茶は“薔薇と桃”を注文した。
17:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:32:50.47 ID:qT/AyJQb0
キャラメルの匂いを上書きするように甘い桃の香りがする。香りがする方向へ目を向けると、店主が紅茶を運んできた。
紅茶はポットサービスで、冷めないようにウォーマーが被せられてる。
ヴィーネ「わーすっごく良い匂い。こっちが“薔薇と桃”ね」
18:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:33:42.82 ID:qT/AyJQb0
京都祇園の香り、なんて言われても想像がつかないから興味本位で私はこの紅茶を注文した。抹茶の香りでもするのか?でも抹茶は別でメニューあったよな。
口につけて、香りと共にいただく。
19:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:37:36.66 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「ご、ごめんって。感想を聞く側に回るとつい…」
ヴィーネ「ふん!」
20:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:40:06.38 ID:qT/AyJQb0
ヴィーネが頰を膨らませてそっぽを向く姿を何度見ただろう。愛おしくて、鼓動が高鳴る。
私はこの顔が見たくて彼女をからかっている節がある。これは悪い癖だ。
21:名無しNIPPER[sage]
2017/11/12(日) 18:40:51.15 ID:qT/AyJQb0
ガヴリール「え、えと、ヴィーネの紅茶も飲みたいな〜…なんて」
ヴィーネ「どうぞお飲みになってください」
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