59: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:32:46.72 ID:/E20kLoAo
「先生もそれは同じ気持ちだけどな……」
「先生まで。みんな、勝手です。私の気持ちなんて、全然考えてくれない」
ありすはがっかりしたような顔をして、それから、申し訳なさそうに言葉を続けた。
60: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:34:12.09 ID:/E20kLoAo
橘ありすがアイドルに。
そのことで、クラス全体がどことなく浮き足立っていた。
クラスだけでなく、学校中が彼女の話題でもちきりだった。
61: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:35:31.50 ID:/E20kLoAo
さて、私は台風の目の中に居て、平生通りに授業をこなした。
そうするより他ない。
台風の目たるありすもまた、淡々と学校生活を送っていた。
彼女の話では、仕事やそれに伴うレッスンが本格的に始まるのは春以降。
62: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:36:59.32 ID:/E20kLoAo
クラスメイトも似たものらしく、ありすの写真が載った雑誌を繰り返し回し読みしたり、何やら噂しあっていた。
「ねえ、橘さん……」
あるとき、ひとりがおずおず声をかけると、それを皮切りにクラスメイトたちはありすの机を囲んだ。
63: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:38:20.65 ID:/E20kLoAo
そんな風に、クラスメイトに囲まれておしゃべりを楽しむ彼女を遠目に、私はすこし切ない気持ちになった。
ね、ありすは、ひとりぼっちなんかじゃないんだよ――。
いつもは喉に引っかかって、矛盾を感じながら飲みこんだ言葉が、いまは私の胸を温めてくれる。
64: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:39:23.65 ID:/E20kLoAo
「お母さんは、なんて?」
「喜んでくれてますよ」
放課後、私が訊くと、ありすはちょっと照れくさそうにした。
65: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:40:21.83 ID:/E20kLoAo
「これからは、仲直りのつもりで着てあげるんです」
「仲直りねぇ」
私はありすの表情に自虐的な陰を見た気がした。
66: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:41:40.27 ID:/E20kLoAo
はたまた続きは明日に。
次の投下分で完結です。よければ最後までお付き合い願います。
よろしう。
67:名無しNIPPER[sage]
2017/11/09(木) 20:43:29.54 ID:D3uhvC1jo
なんとなくありすはあんま胸育たなそう
68: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:44:44.97 ID:/E20kLoAo
俺が育てる。
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