志希「フレちゃんからレズビアンって告白された話」
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1: ◆/lpmBFi8Qc[saga]
2017/11/07(火) 00:34:12.23 ID:B9dyB2410
「あ、シキちゃんシキちゃん」
「なーにーフレちゃん」
「そういえばねー、アタシ――――」
 とある番組の控え室でサンドイッチをもぐもぐごっくんしていたときのこと。
 そーいえばUFOキャッチャーの景品でとっても面白いぬいぐるみを見つけて笑っちゃったとかあたしの真似をしてピザにタバスコをかけて食べたら後悔したとか日本も戦場の単なる後方に過ぎずそのことに気づかないふりをし続ければいずれ罰がくだることになるとか、そんなくだらないことでわいわいぺちゃくちゃしているなかにフレちゃんはその爆弾をさらーっと織り込んだ。
「れずびあん……?」
「そーそー」
 その言葉の意味をあたしは知っていたし、大したものじゃあないけど多少の意見も持っている。なんなら昨日、とあるニュースに触発されて心のなかで取り上げたくらい日常から遠くないワードなんだけど、それなのにあたしの頭は彼女の告白に理解が追い付かなくて、混乱が原液のまま口から溢れ出た。
 あたしのいまの顔、ファンに見せられるかな? なーんて真っ先に考えるあたり、アイドルの鑑だよね〜ほんと。
 発言の主であるフレちゃんは、茶化すように笑った。それが取り繕ったものなのか、それとも純度100%の搾りたてスマイルなのかは定かではない。少なくとも、形としては笑顔になっている。それだけだ。
 そういえば口角をどれほど釣り上げれば笑顔の定義に当てはまるのか具体的な数字はいままで考えたこともなかったんだけれど、どうなんだろう、これは笑ってるって言える、んだよね……?
 いろんな当たり前が失われていく。前後不覚に陥った脳みそが手頃な解答を求める。
「えーっと、れずびあん……れずびあん……れず……び……あん…………あっ、フランスのお菓子?」
「そそ、正解☆ 食らえ! 砂糖多めのレズ・ビ・ア〜ン! ……じゃないよ〜」
 あたしの頓珍漢な言葉にいつもの調子でノリツッコミを入れて、フレちゃんはやっぱり笑ったのだった。
 そのあたりでようやく正常な意識を取り戻して頭が回るようになってフレちゃんの言ったカタカナ五文字の意味も理解できるようになったあたしは、フレちゃんの作った「朗らかに笑っても大丈夫な空気」という土壌に着地してころころ笑った。「そっか〜レズビアンか〜♪ あ、じゃあもう彼女とかいるの〜?」だなんてなんでもないいつものちょっと間抜けな日常会話を意識しながら、別に驚いていないという風を装った。
 それなのに。
「うん」
 平静を意識していたはずのあたしは、今度はひらがなのしかもたった二文字に思考をぶっ飛ばされて空白を挿入されて脳みそをオーバーヒートさせられた。
 えっと。
 もしかしていま、フレちゃん、彼女いるってゆったの?

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