93:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 01:36:14.95 ID:grI1dH9y0
待つこと数分、未だぜぇぜぇ息を切らすサンディが試着室から出てきた。
「お、お待たせしました……」
「お、おぅ……」
謎の圧を感じながらも、改めて彼女の手を取り、歩き出す。
出口方面ではなく、店内に。
最初は不思議な顔をしたサンディもすぐに察し、辺りをキョロキョロ見回していた。
そして、
「ご主人様、あれ」
「こら」
「す、すいません。お兄さん、あれを」
サンディが指さした先には、お世話になった店員がいた。
接客中でも棚の整理中というわけでもなさそうだったので、声をかけてみる。
「すみません、お世話になりました」
「あら、お兄さんとサンディちゃん!!」
店員は軽く屈んでサンディをハグする。当の本人はわたわたと両手をバタバタさせていた。照れ隠しだろう。
それからふと彼女の恰好を見て気づく。自分が見立てた服を着ていることに。
「あら、これはさっき一緒に試着室で着た……」
「改めて、有難うございます。おかげさまで良い買い物ができました。お忙しいところ失礼いたしました」
「いえいえ、とんでもないです」
「それとついでに、お気遣いのほど、有難うございました。それを伝えたくて」
僕が言い終えると同時に、サンディは軽くガウチョパンツの裾をつまんで優雅に一礼する。
「ありがとうございました。素敵なおねえさん。わたしは、あなたのような優しい大人になりたい」
店員の目に涙が溜まるのが分かる。それを誤魔化すような素振りで、こちらに向けて再度深々と頭を下げてくる。
「こちらの方こそ、少しでもお役立ちできて光栄です。またのご来店、お待ちしております」
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