91:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 01:07:01.74 ID:grI1dH9y0
それから一時間ほど後に、店員とサンディが手を繋いで歩いてきた。
いつの間にそんなに仲良くなっていたんだ……。
店員を見ると、なんだか目元の化粧がちょっと厚くなっている。気になる点が増えてしまった。
「お待たせ致しました。それぞれ日常用とレジャー用で着回しも出来る服を持って参りました」
「有難うございます、ファッションに疎いんで助かりました」
「いえいえ、お気になさらないでください。あ、あとこちらもどうぞ〜」
そういって手渡されたのは、数枚の割引券。
受け取っていいものかどうか考えていると、今日の新聞の折り込みに入っているので皆さんも使われてますよとの事。
そうであれば有り難く好意を頂こうとその券を貰い、そのまま精算する事に。
レジの前には人が列になっており、自分は五番目に位置している。
財布の確認をしていると、サンディがぽつりと零す。
「あのお姉さん、いいひとです」
そうだね、良い人っぽいね。
そう僕が言うと、いいえ、いいひとです、と彼女は言い切る。
「服を試着する際に上着を脱いだとき、背中の傷を見られました。
そしたら……お姉さん、泣いてしまいました」
「そして、ゴメンなさい。ほんの少しだけ、お兄さんの所にいる経緯を話してしまいました」
ああ、なるほど。目元の化粧が濃くなったのと、割引券をくれた理由がなんとなくわかった。
「お姉さんも、お兄さんも、良い人です」
そう言ってくれるサンディに、僕は返事の代わりに繋いだ手をほんの少しだけ強く握り返してみた。
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