6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/11/06(月) 21:14:35.03 ID:1bqYoAB70
運命の日。それはあっけなく終わった。
元締めが来日し、そのまま港に足を向け、そこで待ち構えていた警察たちに彼はあっけなく捕縛される。
彼の両手に手錠がかけられたタイミングで船が寄港し、その際に多少のドンパチはあったものの
こちら側に然したる被害もなく収まった。
そのドンパチに加担した身としては、弾が当たらなくて何よりだった。
久々に撃った感覚は変わらず気持ちの悪いもので、相変わらず苦手意識は変わっていない。
船に乗り込んだ際、どうやら配置の都合上、自分が子どもたちのいるタコ部屋に一番近かったらしく保護の役目を担う事になった。
これは依頼内容に含まれていないから後で追徴しようなどとボヤきつつ、その部屋に突入する。
そこには三人の子どもがいた。
どの子も将来は見目麗しい素敵な女性になるのだろうと思わせるような見た目だった。
体中に刻まれた夥しい数の傷跡さえなけば。
その子ども達は、自分を見るや否や震え出した。
何か恐ろしいものを見るような目で見つめられ、うち二人は頭を抱えて泣き出した。
ごめんなさい、ごめんなさいと絞り出すような嗚咽を漏らしながら。
そして自分の前に一人の少女が両手を広げて立ちはだかった。
手入れのされていない黒髪を振り乱し、澱んだ瞳孔をこちらに向ける。
後ろで泣いている子を庇うかのような立ち振る舞いだったが、
小鹿のようにやせ細った両足が大仰に震えており、必死で恐怖と戦っているのが見て取れる。
「いたいこと、するなら、わたしが、うけます」
その惨たらしい献身を見て、体中の力が抜けた。
守れて良かった、という思いと。
護れずに済まなかった、という想いで。
気付けば自分は、大粒の涙を零しながら、その子どもを抱きしめていた。
598Res/293.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20