450:名無しNIPPER[saga]
2018/10/15(月) 23:13:18.54 ID:4uI/TZsD0
温い夏風が頬を撫で、耳を賑わす人込みの喧騒。
祭りのメインイベントとなる花火の打ち上げ会場には、沢山の人でごった煮していた。
これは冗談抜きで油断したらはぐれそうだ。
「ゴメンね、サンディ。人酔いしてないかい?」
「は、はい。平気です。こんなに多くの人が周りにいるのは初めてで、少し楽しいくらいです」
「そっか、良かった。はぐれないように、腕を掴んでもらってもいいかな?」
「え、その……いいんですか?」
「いいんです」
えいっと掛け声付きでサンディは僕の腕に抱き着きながら、下駄の音を響かせる。
最初に比べたら随分と歩き方も慣れたようで何よりだ。
「これから、その、花火が始まるんですね」
「そうだよ。テレビで見た事あるかも知れないけれど、本物は迫力が違うからね」
「楽しみです……♪」
はにかみながら、嬉しそうな声色で答えてくれる。
サンディの片手は僕の左腕、空いた手で広場に向かう途中で手に入れた林檎飴を持っている。
甘い物が好きな彼女は、これを買ったときが一番興奮していた。
林檎一個が丸々包まれたものは流石に入らないとの事で、
カットされている小サイズのものを購入して大事そうにペロペロと舐めていた。
それを見つめるのは、広場でたむろっていた小学校高学年くらいの年頃の少年たち。
まぁ気持ちは分かる。綺麗だもんね。そりゃ目をひくだろう。
実際にここに来るまでに、同年代の男子がすれ違うたび、彼女を振り返っているからなぁ。
ほんと何人かの初恋を奪っていってるのではなかろうか。
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