260:名無しNIPPER[saga]
2017/12/12(火) 05:24:28.46 ID:sLz/PBVL0
潮騒の音が聞こえてくる。
気が付くと私は、砂浜に立っていた。
足元には海水が寄せては引いている。
私の来ている服装は白いワンピースに麦わら帽子。
随分と肌を露出する恰好だ。
気になって左手を水平に上げてみると、拷問を受けた際に付いた大きい切り傷がなくなっているではないか。
よくよく見てみれば、体に刻まれた鞭の痕が随分と薄くなっている。
ふと後ろから声が聞こえてきた。
私を呼ぶ声なのだろうか。
耳を澄ますと、少年の声が聞こえてくる。
おかあさん、おかあさん、と。
はて一体誰を呼んでいるのだろうか。
そう思いながら振り返った直後、腹部にどしんと振動がくる。
先ほどの声の主であろう男の子が飛び込んできたのだ。
そして私に向かって告げる。
「おかあさん」、と。
なんとなく、腑に落ちる。
よく分からないが、私はきっとこの子のお母さんなのだ。
その子に手を引かれるまま、私は何処かへと足を進める。
どこへ行くのか訊ねてみれば、僕らのおうちへ帰るんだと言う。
おとうさんも待ってるよ、と嬉しそうに言うから、なんだか私も嬉しくなる。
砂浜から歩いて間もない所に建っている白い家。
そこの玄関を開けて、ただいまと男の子は元気に入っていく。
私も、なんとなく、ただいま、と言ってみる。
家の間取りは分からないのに、足の赴くままに進むと、リビングに通じていそうなドアの前まで来ていた。
男の子の声が聞こえる。お母さんが帰ってきたよ、お父さん。
お父さんと呼ばれた人は答える。よし、じゃあ二人で出迎えようか。
私は恐る恐る、そのドアを開ける。
そこには。
「おかえり、サンディ」
お兄さんが、その男の子を抱きかかえて、私を迎えてくれた。
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