234:名無しNIPPER[saga]
2017/12/12(火) 01:12:10.92 ID:sLz/PBVL0
深呼吸を幾度か繰り返して平静に戻る。
ちょうどその頃合を見計らったかのように、お兄さんも車の駐車してあるスペースに辿り着いた。
そこに停めてある桃色の車に乗り込む前に、
サイドミラーを覗き込んで手櫛でサッサッと前髪を整える。
髪型はおかしくはないだろうかと自問自答。
答えは当然返ってこない。
初めて出会ってからずっとボサボサの髪で過ごしていた手前、今更という感はある。
でも、お兄さんは髪を切り終えた私に向かって綺麗だと言ってくれた。
嬉しかった。とても嬉しかったのだ。
だから、あの時の気持ちを忘れないように、不慣れな手付きで髪をセットする。
そうするとまるで自分が女の子だった事を思い出すようで、少し照れくさくなる。
それと同時に胸が温かくなるのだ。
とっても不思議な感覚。
何度か前髪の分け目を弄っていると、ふと後ろに視線を感じた。
サイドミラーの視線を自分の髪から後ろに少しずらしてみると、
ほほぅ、と何か感心したような顔立ちでお兄さんが覗き込んでいる。
「綺麗だよ、サンディ」
そう言ってお兄さんは運転席側に移行して、車の中に入り込む。
私は思わずしゃがみ込んだ。
頬の熱さがぶり返してきたから。
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