23:名無しNIPPER[saga]
2017/11/07(火) 07:34:15.98 ID:lfj9bXFJ0
涙を流していたサンディを事務所のソファに座らせ、手元にティッシュを添えてやる。
その対面に自分は腰をおろして、感情の起伏が治まるのを待ってみた。
「お見苦しいところを、失礼いたしました」
ずびっ、っと鼻を啜りながら彼女は謝罪を口にする。
ようやく泣き止んでくれた頃には、辺りは既に真っ暗になっていた。
時刻は十八時を回って少々。秋の半ばは夏に比べると宵の口が早くなる。
「いいよ、気にしないで。ゆっくり慣れていけばいいさ」
「お心遣い、恐縮です」
不器用に頭をかくん、と下げてくる。彼女の年相応な本意の礼だろう。
何とも不慣れなのが妙に可愛らしい。
「それで、今日の夕飯なんだけれど。何か食べたいものとかあるかい?」
「いいえ、特に。……それで、私は何をすれば宜しいのですか?」
「え、いや別に。何もしなくても、出前で適当に頼もうかなって」
「そうではなく。食べ物を貰うときは、相応の何かをするという事でいつも貰っていたので」
「そういうのは要らないし、受け取らないよ」
冷えた言葉が口から漏れた。
彼女の過ごした環境への憤りが、つい態度に出てしまう。
こういう点が自身の幼い所で、改善しなければならないところだというのに。
猛省しながらサンディを見ると、やはり空気が変わってしまった機微に触れている。
緊張していただろう体が更にこわばっており、顔面蒼白になっていた。
「も、も、申し訳ありません……ご主人様への不快な発言をしてしまい、まして……」
彼女のスカートの裾が大きく皺になる。両手で握りしめているから。
早々に誤解を解かねばならない。
「ああいや、違う、違うんだ。君に怒っていたんじゃない。
君がいた昔の場所を考えて、僕はつい変な空気にしてしまった。そして、不安にさせてしまった事を心から謝罪する」
赦してくれとは言えないが、誠意が伝わりますようにと思いながら大きく頭を下げた。
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