206:名無しNIPPER[saga]
2017/11/25(土) 12:13:31.64 ID:KdyHe2Zm0
だから、心を空っぽにした。
そうして一日が早く過ぎますようにと願いながら
寒さをしのげるように、奴隷だった私たちは固まって眠るようになる。
ドブ鼠のような様だなと前のご主人様は笑いながら、真冬の夜に冷水をその集塊に浴びせてくることもあった。
その時は体温が下がるのを防ぐために一層固まって擦り寄った。
唇が真っ白になる子を輪の中心に、体を一所懸命こすり合わせて温めた。
他の子にそうしてもらい、他の子にそうしてあげていた。
死なないように生きる事に、私たちは必死だったのだ。
最初は十五人いた。
別所へ競売にかけられたり、冷たくなっていった子がいたりして、どんどん人数は減っていく。
結局そうして生き残って無事に日本に来れたのはたった三人。
たった三人だった。
一緒に船に乗ってきた子以外の顔立ちを頭の中で描こうとすると、ペンで塗りつぶされたような漠然としたものに仕上がる。
散った皆の事を考え出すと心が砕けそうになるから。
今は思い出せない。思い出してはいけないのだろう。
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