168:名無しNIPPER[saga]
2017/11/16(木) 01:58:46.38 ID:qrdjbAqX0
マスターがお冷を二杯、カウンターごしに渡してくる。
僕はそれを手に取って少し喉を潤した。
不敵な笑顔が対面に見える。笑いかた一つとっても迫力ある人だ。
「えらく久しぶりじゃねぇか、一年ぶりくらいだな」
「ちょっと長丁場な事件を請け負っちゃってね。ここが潰れてなくて安心したよ」
「ふっ、ぬかせ。常連のマダムたちがいる限りは安泰よ」
僕らが軽口を交わすなか、サンディは未だ気後れしているのか下を向いてテーブルをじっと見つめている。
マスターは彼女をちらりと見て、それから僕に目線を向けた。
それからくるりと踵を返して、ご注文は、と催促してくる。
空気の読める人だ。あまり詮索しないからこそ、ここは居心地がいい。
「じゃあ、オムライス。サンディは?」
「わ、私も同じもので……」
あいよ、と返事が一つ。
久々に絶品のオムライスが楽しめるのを心待ちにしつつ、隣のサンディに話しかける。
「ああいう見た目だけれど、凄くいい人だよ」
「そ、そうですね。見た目で判断しちゃいけませんよね」
「そうそう。パッと見だとお勤め上がりの極道さんだけれど、あの人って花と絵本が大好きだから」
「!?」
サンディが驚いた表情を見せる。そして厨房から、
「おい聞こえてんぞ、情報漏えいで訴えるぞポンコツ探偵」
と野次が聞こえてきた。
ハードボイルド私立探偵をポンコツ呼ばわりとは失礼な。
だがポンコツと呼ばれる事は身に覚えは幾つかあるので、そっと押し黙ることにした。
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