153:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:14:13.99 ID:PX2kAcV30
「あーん」
「……」
「あーん」
「……」
「ほら、口開けてみて」
「……ぅ、……うぅ」
匙を出してしまった手前、もはや後には引けない僕の心境。
ごり押し気味にでも食べさせてやろうという気概すら生まれてきた。
サンディは落としていた肩をきゅっと縮こまらせて、手元をもじもじさせている。
何かを躊躇っているようだ。
何を躊躇うことがある、さぁ、ぱくっと、パクッと来るんだ。
セクハラじゃありませんように。
そう願うクールな自分を尻目に、彼女の口元にスプーンを差し出してから大よそ三十秒。
意を決したような顔つきを一瞬見せて、サンディは目を瞑ったまま、はむっとスプーンを咥えた。
「あ……、美味しい……」
「でしょ? 味付けが満点なんだから、気にしなくていいよ。これからもっと上手になるよ」
「は、はい!」
そして朝食は再開した。サンディは美味しそうにパンを齧りながら、ベーコンと卵を胃に詰めていく。
もっきゅ、もっきゅ。本当に美味しそうに食べている。
彼女の表情筋が一番動くのは、もしかするとご飯のときなのかも知れないな。微笑ましい。
そう思いながら、僕はサンディが淹れてくれたコーヒーをごくりと飲む。凄まじいエグ味が舌を襲う。
そして盛大に吹き出した。
「サンディ、なにこれ」
「お兄さんはコーヒーには砂糖を入れないみたいなので、代わりに塩を入れてみました」
屈託のない顔でそう言われたら、有難うとしか言えない弱気な自分が大好きだ。
だがこれは後でやんわりと訂正しておかねばなるまい……。
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