123:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 08:08:40.47 ID:OiSFZpw30
「ふわぁ…………!」
思わず声が漏れる。
これでもかと言わんばかりに並ぶ、古今東西の様々なケーキ。
一口サイズのものから、ピース型、ホールごと丸々置いていたりと形もそれぞれ。
カットフルーツの傍にはチョコレートの噴水が湧き出ている。
ボタンを押すと温かいバニラの飲み物まであるようだ。
昔、遠い昔、絵本を読んでくれた人がいた頃、そこに描かれていたときの世界。
童話の中に迷い込んでしまったのだろうか。
取り皿を持ってみたものの、どれから取ろうかと悩んでしまう。
私が取ってもいいのかな。
首輪で繋がれていたような、畜生の扱いしかされていなかったような、浅ましい私でも。
わたしがさわっても、きたないっていわないかな……?
心にモヤがかかり、俯いてケーキの群れから背を向けようとしたら、
手元の取り皿にふと重みを覚えた。
そこには、一口サイズのショートケーキが置かれている。
「サンディ、なに食べる?」
朗らかな声で、お兄さんが笑いながらケーキを一欠片、取ってくれたのだ。
私の暗い気持ちなど素知らぬように。知っていても見ないフリをしてくれているかのように。
「これだけあったら迷うよね。僕もどれにしようかずっと考えてて、結局こうなっちゃった」
そして私に見せてくれたのは、取り皿にてんこ盛りのケーキの山。
所狭しと並んでいるどころか、三段くらい詰まれたそれは、見栄えなんか考えていませんと体現しているかの如く。
こんな量が食べられるのだろうか。周りの人もなんかヒソヒソお兄さんの方を見ながら言ってるような……。
大人なのに妙に愛らしい。まるで無邪気な子どものようだ。
「ぷっ……ふふ、ふふふ………あははは、あはははは!」
気付けば、私は笑っていた。笑ってしまった。
とても素直に笑えていた。
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