120:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 07:12:26.25 ID:OiSFZpw30
新聞を読み終わったら徐に立ち上がってキッチンに向かうお兄さん。
私はカルガモのように後ろをとてとてとついて行く。
振り返って嬉しそうな顔をしながら私の頭を撫でて、今日の朝ごはんのリクエストを訊ねてきた。
私如きがご飯を食べるなんて滅相もない、というとお兄さんはとっても悲しそうな顔をするので、
その言葉を飲み込みながら伝える。
なんでもいいです。なんでも嬉しいです、と。
それが一番難しいなぁ、と顔をふにゃっとさせながらお兄さんは戸棚からフライパンを取り出した。
私も早く料理が出来るようになりたい。切にそう思う。
そのままお兄さんが朝食を作り、私がお皿を並べる。
これが朝食前の風景になり始めた。心の芯が温かい。また泣きそうになってしまう。
それから少々時間が経つと、部屋に美味しそうな匂いが充満してきた。
「では、サンディ。号令よろしく!」
「はい、では僭越ながら……いただきます」
「いただきます!」
いただきます。とっても良い言葉だと思う。
知識として前々から知ってはいたが、いざこうして自分が使う方の立場になるなんて思わなかった。
毎日三食のご飯を食べる事が出来ているのは今までの自分の人生では考えられない奇跡だ。
本当は日本に着いたときの船で起こった銃撃戦で既に私は死んでいて、日本でいう鬼籍に入ったのかも知れない。
それならそれでも構わない。
神様と一緒に過ごせているという事に変わりはないのだから。
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