119:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 06:55:31.28 ID:OiSFZpw30
お兄さんはコーヒーを軽く啜り、再び新聞に目を通し始める。
前にちょっとだけ飲ませてもらった時はとっても苦かったけれど、
私用に改めてコーヒーを淹れ直して、それにミルクと砂糖を混ぜてくれたら
驚くほど美味しい飲み物に変わったのを覚えている。
でもお兄さんはコーヒーを真っ黒いまま飲めている。不思議だ。
「それ、黒いままでも美味しいんですか?」
なんとなく聞いてみる。お兄さんは困った顔をしながら答えてくれた。
「あんまり美味しくないね。僕は甘党だから、本当はミルクと砂糖があった方が好き」
「では何故に入れないのですか?」
「ハードボイルドのコーヒーはブラックと相場が決まっているんだ」
お兄さんは、ふふん、と鼻を鳴らすようなポーズでまたコーヒーに口をつけた。
ハードボイルド。その単語は聞いた事がないので辞書でめくってみた事がある。
卵の固ゆでが語源になった、冷静だったり冷酷だったりする人を現すらしい。
現状だとほぼ間違いなく正反対だと思う。
物腰も柔らかくて穏やか。誰かのために涙を流せる人。
お兄さんは、ソフトマイルドの方がしっくり来るような気がする。
そして、それを言ったら何となくお兄さんががっかりしそうなので、私はグッと胸に秘めておくことにした。
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