101:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 04:40:09.68 ID:grI1dH9y0
サンディを店の入り口で待機させて、僕は閉店の準備で忙しそうな売店に滑り込む。
店員に心の中で謝りつつも目当ての品を探してみた。
お土産コーナーの一角にそれを見つけ、プレゼント用に包んでもらう。
これ以上手数をかけないようお店を足早に後にして、外で待ってくれたサンディに駆け寄る。
「何か探していたものは買えましたか?」
「うん、どうにかね」
「それは何よりです」
「サンディ、手を出して」
「?」
疑問には思っただろうが、大人しく彼女は右手を差し出してくる。
その手の平に僕はラッピングされたものを置いてみた。彼女の手に包まるくらいの小さなサイズだ。
「これは?」
「まぁ、ラッピング破って開けてみてほしい」
言われたように彼女は丁寧にラッピングを解いていく。
そして、その全貌が分かったとき、息を飲んだ。
「これ、は……」
「キリンのキーホルダー。安物だけれど、今日の記念って事でさ」
「これ、わたしに……?」
「僕が使えるにはちょっと年を取り過ぎたからね」
あまりこういうのを誰かにしたことが無い身なので、照れ隠しに頬を軽く搔いてしまう。
好みかどうか分からないし、勝手に買ってしまった物だから受け取って困ってなければいいな、と心配ばかりが浮かんでくる。
「…………私の、生涯の、宝物が、………出来ました」
キーホルダーを両手に包んで、それを胸の真ん中に添えて、彼女は言う。
瞳からは感情が零れている。ぽろぽろと、ぽたぽたと。
感情は数値化されないから分からない。様子でだけしか判断できない曖昧なものだけれど。
サンディは、喜んでくれた。そうだと思う。
彼女の心に少しでも届いたのなれば、そうであれば、僕も嬉しい。
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