100:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 04:24:03.27 ID:grI1dH9y0
サンディは僕の服の裾を掴んでいる事にも気づかずに、夢中でキリンを凝視している。
そしてキリンを見始めてしばらく時間が経過した。
どれくらい過ぎたのかというと、僕は目蓋を閉じても黄色と茶色のまだら模様が浮かぶくらいずっとそこにいた。
それから更に時間が経ち、園内のチャイムから本日の業務時間がもうすぐ終わる放送が流れて来た。
僕はそこで意識をようやく取り戻す。
隣のサンディはまだずっとキリンの様子を目で追っていた。
「サンディ、もうすぐ動物園が閉まるんだって」
「…………」
「サンディ、サンディさん」
「…………」
「おーい、さーんでぃー」
「……はっ! す、すいません!キリンさんを見るのに集中していました!」
頭をびくんと縦に振ってサンディは僕を見つめてくる。
そして、ようやく自分が服の裾をがっしり掴んでいた事に気付いたようだ。頬を真っ赤にして慌てて手を放した。
なんとも微笑ましい。
「よし、じゃあ帰ろうか」
「は、はい……」
彼女は頷くものの名残惜しそうにキリンに何度か視線を送っている。
別に悪い事をしていないのだが、なんだか申し訳ない気持ちが沸き起こる。
そこで一つ妙案が浮かんだ。
「帰る前に寄りたいところがあるんだけれど、いいかい?」
「もちろんです。何処までもお供します」
軽くガウチョパンツの端をつまんで、恭しく一礼。
奴隷の頃にメイドの立ち振る舞いでも訓練していたのだろうか。
堂に入ったその動きは長い間培ってきた何某を思わせる。
彼女が辛かったであろう頃の面影が脳裏をよぎったので軽く頭を振り、
僕はサンディを動物園の売店まで連れて行く事にした。
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