女戦士「死に場所を探している」ぼく「はあ…」
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15: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/10/29(日) 16:49:43.97 ID:c9/bqZoV0
ぼく「それじゃ、この薬を飲んでください」

ぼく(研究室に戻ったぼくは、ある薬瓶を女戦士さんに差し出す。中身は強力な睡眠薬だ。飲んだ人間はたちまちのうちに昏倒する。そして、しばらくは何をされても起きない)

ぼく(それは例えば、腹を切り裂かれて臓物を抜かれたとしても……)

女戦士「わかった。ごくごく、ぷはー。まっずい、くそまずいなこれ。毒か、さては毒だなこれ。まき散らす糞尿も私の中には無いが、はてさていったいどんなおぞましい死に方をするのかぐごごごすぴー」

ぼく「しゃべりながら寝た。立ったままなのが凄いなこの人」

ぼく「まあでもバタンと床に倒れなくてよかった。そうすると手術台に運ぶのが大変だった」

ぼく(ぼくは傍にあった手術台へと女戦士さんの体を横たえる。本当に申し訳ないけれど、本人の了承なしに上半身の服をはだけさせてもらった)

ぼく(形のいい乳房があらわになる。姉の体で見慣れていたつもりだけど、美しい女性の体というものはどうしても見蕩れてしまう)

ぼく「はっ、いかんいかん。気を取り直して……いくぞ」

ぼく(ぼくは手にしたメスを、女戦士さんの左鎖骨の下あたりに突き入れた。女戦士さんの反応はない。今のところ薬はよく効いている)

ぼく(しかし薬の効果はきっとほんの僅かしかもたない。剣で刺した傷が瞬く間に回復したように、薬による体の異常もたちまちのうちに回復してしまうはずだ)

ぼく(ぼくは迅速に作業を進める。乳房に沿うようにメスを入れ、皮膚をめくり、胸部の中身をあらわにする)

ぼく(つまりは心臓だ。ぼくは女戦士さんの体から心臓を切り取り、それをあらかじめ用意していた三十センチ四方の鉄箱の中に閉じ込めた)

ぼく(がちゃりと念入りに鍵までかける。これでこの心臓は彼女の中に戻ることは出来ないはずだ)

ぼく「さて、どうなる……」

ぼく(彼女の体の再生が始まった。めくれあがった皮膚がひとりでに戻り、あっという間に傷は無くなってしまう)

女戦士「うーん、よく寝た……あっ、なんで私おっぱい丸出しなんだ。やったな、お前ついにやったな、えっち」

ぼく「ちがうちがう、ちがいます、誤解です。これにはやむをえない事情があったのです」

ぼく(女戦士さんは普通に今までのように起きてきた。ならば、鉄箱の中の心臓はどうなったのだろう)

ぼく「………」

ぼく(ぼくは絶句する。ぼくは高揚する。箱の中身はからっぽだった。ぼくはまぎれもなく、奇跡を今この目で目撃したのだ)

ぼく(女戦士さんの異常な体質、それ自体も奇跡ではあった。しかしそれはあくまで傷の超回復という、現実に存在するものの延長線上にあったものだった)

ぼく(今回のこれは違う。箱の中にあったはずのものが消えた。おそらくは女戦士さんの体の中に瞬間的に移動した。これは、現実にはあり得ない。つまり―――これは『魔法』だ)

ぼく(ぼくは今、魔法の実在を確認したのだ)




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