13: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/10/29(日) 16:48:38.44 ID:c9/bqZoV0
ぼく(ぼくは館を出て、少し歩いたところにある河原に立っていた)
ぼく(ごうごうと大きな音と共に舞い上がる水しぶきがぼくの頬を叩く。目の前には滝つぼがあった。ぼくの住む館は山の頂に近いところにある。少し歩けば、こうやって山肌を滑り落ちる滝があるのだ)
ぼく(女戦士さんはここにはいない。彼女はというと……)
女戦士「おぉ〜い、そろそろいいかぁ〜」
ぼく(ごうごうと響く滝の音に負けない大音量で、滝の上から女戦士さんがこちらに呼び掛けてきた)
ぼく(そう、彼女は滝の上にいる。三十メートルは優にある高さから、彼女は物おじせず滝つぼのそばに立つぼくを覗き込んでいる)
ぼく(ぼくは手をあげて彼女に合図を出した。すると彼女は景気よくジャンプし、滝の上から空中へと身を躍らせた)
ぼく(びじゃん、と重く湿った音が響いた)
ぼく(彼女が落ちたのは滝つぼではない。ぼくの立つ河原、つまりは岩場だ)
ぼく(ぼくがそうしてくれと頼んだ)
ぼく(彼女は何度もこれまでに体がバラバラになったことがあるという話をした。しかし彼女は気が付くと五体満足で復活していたという)
ぼく(ぼくはその復活の過程が知りたかった。彼女の再生力がどれ程のものなのかを確認したかった)
ぼく(果たして今、ぼくの目の前にはぐちゃりと潰れた彼女の肉体がある)
ぼく(昔、大きな蛾を靴の裏で踏みつぶした時のことを思い出した)
ぼく(彼女は間違いなく死んでいた。生きているはずがない)
ぼく(首は折れ、腕はめちゃくちゃに折れ曲がり、足はかろうじて皮膚だけで繋がっている。衝撃で破けた腹部からは臓物が四方八方に飛び出していた)
ぼく「お、おおぅ……」
ぼく(思わず口からうめき声が漏れていた。女戦士さんの体が再生を始めたのだ。折れ曲がった首はひとりでに真っすぐになり、同様に手足もぐねぐねと蠢きながら元の形へと戻っていく)
ぼく(バラバラになった粘土細工を修復しているようだ。透明な人間が隣にいて、こねこねと手足を繋ぎ合わせているのではと想像してしまう)
ぼく(ひとりでに腹に戻ろうと蠢く臓物は地を這う巨大な芋虫に見えた。見たいと頼んだ手前、目をそらすわけにもいかない。生理的嫌悪感に耐え、そのおぞましい光景を注視し続けた)
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