高垣楓「純情な恋する乙女なんて如何でしょうか?」
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50: ◆TDuorh6/aM[saga]
2017/10/30(月) 19:25:47.82 ID:squNLtVqO


 晴れた。

 たった三文字で完結する今の状況が、面白いくらい俺のテンションを昂ぶらせていた。
 長く続いた雨模様も彼方の空へ、今の空は雲一つか二つくらいしかない晴れ晴れとした快晴だ。
 部屋干しや傘にお別れを告げ、俺は意気揚々と事務所へ向かう。
 靴の底から水が染み込んでこないことがこんなに喜ばしいなんて。

「おはようございます」

「おはようございます、プロデューサーさん。晴れてよかったですね」

 ちひろさんもこの連日の雨に参っていたようで、今日の声は心なし明るい。
 いや、普段から明るいけど。

「おはようございます、プロデューサー。今日は晴れましたし、せっかくですから飲みに行きませんか?」

 唐突。

 晴れたらお酒を飲めるなら、休肝日は一年のうち三割にも満たないだろう。
 とは言え、楓さんのお誘いを断るつもりもない。

「構いませんよ。ちひろさんはどうしますか?」

「あ、私は予定が入ってますので」

「あら、そうでしたか」

 残念そうな顔をする楓さん。
 そんな表情すら綺麗に見えてしまうのは、なんだかズルい気がする。
 そしてすぐまた笑顔に変わったのは、仕事が終わってお酒を煽るのを想像したからだろうか。
 ころころ変わる彼女の表情は、秋の空以上に見ていて飽きなかった。

「それでは、仕事が終わりましたら連絡します」

「一応変装もお願いしますよ、楓さん」

 


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