28:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:08:44.62 ID:2O49l66V0
「良いですよね。仕掛けを投げて、波紋が広がって……落ち着きます」
彼女は独り言のようにそう言う。
俺が見惚れていたのに気づいたんだろうか、とびくりとした。ふと、不審者だったときと同じ格好をしていることを思い出した。
俺も負けじと仕掛けを飛ばしたけれど、彼女よりも手前で着水する。
そのまま重りが底につくまで待っている時間は、水の流れが手にも伝わって、なんとも言えない、自分の深いところまで沈んで行くような気持ちになる。
底に着いてふわふわと揺られているような、そんな感覚だ。
二、三度竿をしゃくると、コ、コン、と当たりがあった。しかし、それだけだった。
どうかしのか、目線をよこした彼女に向かって、俺は曖昧に笑う。「そんな気がしたんだけどな」
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