26:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 03:04:18.62 ID:2O49l66V0
夜の黒いインキが溶け出したように、海と空の境界はおぼろげだった。
午前三時だというのに遠くのビルと、工業地帯がやたらと明るく、作業灯と月が海に揺れていた。
よっこいしょ、と足元にクーラーボックスを置く。
俺がいそいそとバケツに海水を汲んだりしているあいだ、肇は手際よくタックルを組み立てていた。
エサ釣りではなく、重り、針、ワームだけの簡素なルアーを使うようだったので、俺も真似をして針にワームを引っ掛ける。
正直、ズブの素人である俺が釣りの戦力になれるとは思っていないから、肇の見よう見まねで仕掛けを飛ばすだけなのだ。
「今日は何を狙うの」
「今日は、チヌ……黒鯛です。結構難しいと聞くので、それ以外にもいろいろ釣れないかなと思っていたら、ワームをお勧めされたんです。欲張りでしょうか」
肇なら夕食分はなんとかなるんじゃないか、と俺は言った。
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