かきね「すくーる?」
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9: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/09(月) 04:28:40.91 ID:CdsvNY5b0

「……心理定規さーん」

手をふって、にこやかにちびっこを見送る心理定規。
二人のやりとりをビビってみていた誉望はこわごわ声をかける。
いくら暗部組織でも、銃器をおもちゃにするなんてデンジャラスすぎる日常パートには引いた様子だ。
冷静にかきねの手からおもちゃをすべて回収した心理定規は、ぱたぱた振っていた手を止めるとやさしいおねえさんのリアクションが嘘のようなむっとした顔で立ち上がった。
やっぱりかきねが持ってきたのは本物の、彼女の持ち物だったらしい。

「大丈夫。弾は別で保管してるし、こっちも信管がなければただの粘土みたいなものよ。きちんとしまっておいたんだけど」

「恐怖のファンシーグッズっスね……早いとこ、小さい子に触られちゃまずいものを片付けましょう。そっちお先にどうぞっス」

物理的にやばいのは心理定規の持ち物で間違いないだろうが、順を譲った誉望の方も相当まずい。
おもに、教育に。

少しして。
かきね探検隊がラグマットの草原を転がって、ソファの船で遊んでいる間に二人はそれぞれ隠れ家に持ち込んでいた荷物を無事整えることが出来た。
今まで以上に遠慮なくリーダーが好き勝手してしまうので危険物や重要なものは、空いている部屋に押し込んで子供にはあけられないように鍵をかけておいた。
それでも誉望の定位置の周りはそんなに変わったようにはみえない。
相変わらずゲーム機やグッズが置いてあるが本人曰く。
「無いとおちつかない」のと、
「勝手に壊されること以上にまずいことがある」ので少しの片付けでは彼の不安要素は解消されないらしい。

「まあ小さくても垣根さんだから、何かあっても心配は無さそうっスけど」

呑気にそう言った誉望の目の前で、かきねがいきなりうずくまった。
棚の下をのぞいていて、立ち上がった調子に頭をぶつけたようだ。
ゴツン、と結構な音がした。
それをみていた心理定規が慌てて様子を見に行く。

「おでこぶつけたの? 大丈夫?」


「……う」

グッとかきねの顔が歪む。
今にもうわあああん! と泣き出しそうな様子に、誉望はまるで爆弾から身を守るように素早く後方に逃げた。

「心理定規ぉおお、かっ垣根さんが痛がってますけど?!」

いつもの垣根ならちょっとやそっとの襲撃くらいは、
「いってえ」の一言で軽く済ませそうだが今はそれどころじゃない緊急事態だ。
そうは言っても、自分は家具の後ろに隠れて心理定規に確認させようとするのは大げさすぎる。

「こんな小さな子に、いつもの彼の反応なんて期待しちゃ駄目でしょう? 何で君が逃げるのよ。ほら、みせて?」

座りこんでしまったかきねのそばに行くと、心理定規は額を押さえる小さな手をそっと外させた。
少し赤くなっていたが、こぶが出来るほどひどくぶつけていないらしい。

「いやー、駄目です。これじゃただのちっちゃい子じゃないですか。俺小さい生き物は相性悪いんです。急に何するかわかんないじゃないスか」

おおごとではなさそうだ、と少し安心したのか物陰から出てきた誉望は、聞かれてもいないのに自分の弱点を晒しはじめた。
どうやら室内のオタクグッズは精神・物理両面で相手を遠ざけるためのバリケードとしても機能しているようだ。


「大丈夫よ。いたいのいたいの……飛んでったかな?」

「……いたい」

心理定規はそんな怪我はしてないのよね、と困ったようにもう一度小さい額をみた。
かきねは眉をぎゅっと寄せて泣きそうになるのを一生懸命こらえている。
涙目で見上げてくる子どもの顔に、心理定規は小さく声をだしておかしそうに笑った。



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