8: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/09(月) 04:14:53.31 ID:CdsvNY5b0
「あの小さい垣根さん、これからどうしたらいいんスかね」
小さいかきね、もとい何かおかしなことが起きてしまったリーダーが見えなくなると、部下の二人は揃ってため息をついていた。
「今はどうしてるの?」
「隠れ家の中を探検に行きました。やってることはまるっきり子どもですよ」
漫画やアニメのように体だけ変化してしまっている可能性も疑ったようだが、誉望の期待はハズれてしまったようだ。
「そう。なんで……こんなことになっちゃったのかな」
少し落ち着く暇が出来ると、小さい子どもの世話から一歩離れて問題に目が向けられる。
原因はまだわからないが、状況を考えると垣根が子供になってしまったと見て間違いなさそうだった。
今までのやりとりを振り返るなら、見た目だけじゃなく中身も完全にだ。
垣根が実はものすごい演技派で悪趣味な体を張ったドッキリを仕掛けてきてる可能性は……あったらそれも恐ろしい。
一応、二人が垣根の知り合いなのはもちろん。
暗部組織のリーダーの一大事となると、今後の任務にも関わってくるだけに気がかりになる。
「やっぱりどこかの研究施設でおかしな研究でも成功したのか?」
そう言えばさっきジュースもらったって飲んでた気がするんスけど……と言って誉望は最初に小さいかきねがいた辺りを見に行った。
「これもあったんですが」
小さいペットボトルと、ジャケットの袖の中にシャツが通っているもの(どう脱いだものか半分ひっくり返ってる)とベルトの留まったままのズボンを能力で運びながら誉望は戻ってきた。
今、小さいかきねが身に着けているものを元の状態から引いた残骸。
中身だけ消えてしまった、着ていたままの抜け殻みたいな服はちょっとホラーだった。
「服はクリーニングね。そのペットボトルまだ中身が残ってるわ。お茶みたいだけど、こんな商品見たことないわね」
「おっと、俺は飲みませんよ」
ゴーグルをつけてさっそく商品名とメーカーを調べていた誉望が何か言われる前に釘をさす。
検索結果は該当なし。
どうやらラベルに書いてあったのは、全て虚偽か架空の実在しないものだったらしい。
「そんなことして、もしもよ? 君まで彼みたいになったら事態が悪化するだけでしょ。私一人で面倒見きれないわ」
どうせ末端の子達にも働いてもらうことになりそうだし協力してもらおうかな、なんて恐ろしいことをため息まじりで呟く。
心理定規はもちろん誉望もよくわかっていることだが。
暗部組織の人員は替えがきく。
何かあればかわりを補充できるくらいだ。
そんな中で数少ない例外が、垣根のような超能力者だろう。
それが……こんなことになっては、『スクール』だけでなく学園都市を巻き込んだ大問題に発展しかねない。
何より、わけあって暗部にいる二人はあの『電話の男』に難癖をつけられる前に少しでも目の前で生じた問題に対処しようとしていた。
この組織の圧倒的な強みがなにか、は考えるまでもない。
「そいつが原因か検証はするんスね」
厄介なことになったな……と渋い顔をして誉望はゴーグルを外した。
そんな時、とてとてちびっこが部屋に戻ってきた。
二人の深刻そうなようすなんてわかりもしないだろう。
なにかを一生懸命もって楽しそうにやってきた。
「よいしょ。みてみて。じゃーん! ぴすとるだーてをあげろー!」
楽しそうな声がして、物騒なものが二人の目に飛び込んできた。
二人の方に向けられたのは五歳児の手にもなんとか持てるくらい小さなグリップ、レデイース用の小型の銃だ。
それに、こっちもドラマでよくありそうなセリフで誉望が叫ぶ。
「垣根さん?! そんなのどこから…そいつをゆっくり下に置いて両手を上にあげて下さい!」
「……あら。すごいわね。私にも貸して?」
おねえちゃんが笑顔でそう言うとかきねはいいよ、と銃を持ち上げて渡してくれた。
「ありがとう。人に渡す時は、こうしてグリップを向けるのがマナーなのよ。銃口はこっち」
「ふーん。むこうにあった。あとこれぐにぐに。これもあげる。はいどーぞ」
「はい。ありがとう」
「あっちのおへやもみてくるね!」
「はーい、気をつけてね」
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