かきね「すくーる?」
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66: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2018/05/11(金) 03:42:06.18 ID:dqOtcDic0

「いっつもえらいぞー」

「ありがとな」

「えーっとたお、たおり……なんだっけ? ありがとよろしくねーのやつ。たおりの」

「『たよりにしてます』かな?」

「そう! たよりにしてるぞー」

そんな風に次々浴びせられる容赦のない褒め言葉と頭を小さい手でひたすらぽんぽんされて。
下を向いてじっとしていた誉望だったが、急に肩を震わせはじめた。

「かっ、かぎねざん……っ」

「どした? よしよし、よしよし」

「ううっ……」

心配したかきねにますます頭を撫でられて誉望は泣いていた。
日頃、クールぶってジト目でためいきなんかついたりしている奴が、ぐすぐす鼻を鳴らしていた。
『スクール』に大事件があって精神的にも疲れていた。
イラついたり落ち着かないでいたせいもあっただろう。
そこにこの仕打ち。
普段、褒められることはまずない。
心理定規は気を利かせて「お疲れさま」くらいは言ってくれるが。
パシリがなにかこなしたからと言ってご苦労、となるかと言ったら。あのリーダーだ。まずならないだろう。
一応、小さいとは言っても垣根帝督がそんなことを言うのは誉望にはなかなかの衝撃だったらしい。

「おねえちゃーんばんかがね。ないちゃったよ?」

「疲れてるのよ」

呆れたように淡々とした声で心理定規は言ったが、かきねに向けられる表情はにっこり優しい。

「おつかれさんか? よーしまってろ!」

元気よくまたどこかに走っていくかきね。
屈み続けていた背中をようやく上げた誉望は、その後ろ姿を見てぼんやりした顔で首を傾げた。

「垣根さんが……優しい。何だこれ、天使?」

「そうね。可愛い」

いつものような皮肉や冗談でなく文字通りの天使さんの降臨に感動する保護者二人だった。


「んしょ。ほーらばんかおふとんだよ。ぱぱがもってきたげたよ。えらいだろ?」

「わー、パパ優しいのね」

なぜか毛布を運んできたかきねにぎょっとして誉望は横を見た。
だが、相手の言動を理解するのに一番頼りになるはずの心理定規はにこにこ笑ってすっかりおままごとにあわせている。
ふざけたことをいいながら、毛布を広げる手伝いまでしていた。

「ほーらぐるぐるー」

「っス」

誉望を頭だけ残して毛布でラッピングすると。
かきねは満足そうにうなずきながら心理定規たちの間に空いた空間に座った。
二人が仲良く並んで座るなんてことはなかったのでスペースがたっぷりあったが、かきねが来ると心理定規が余白を詰めてしまった。

「おつかれさんはな。ねんねんだぞー。ねーんねんねん、ねーんねんねんねん……」

そしてまた、今度は誉望の肩をぱしぱし叩きはじめるかきね。
妙なリズムで揺らされている誉望は困惑して首だけで心理定規に助けを求めたが、

「あの……セミの声みたいになってんだけどこれは」

「しーっ。ちゃんと言うこと聞いて」

相変わらずの小悪魔スマイル(ちょっと優しげ)で首を振られてしまった。

「いいからねんねしろ。この、おつかれさんめ!」

「はぁ、昼寝を強要されてる……」

「よーし。もうねんねんしたか?」

どうだ? と疑いの目を向けてくるかきね。
どうしよう、と困る誉望。
笑顔のままうなずく心理定規。
誉望は観念して、ぐっと目を閉じた。


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