63: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2018/04/01(日) 06:33:36.51 ID:FOwSYQ0x0
「今は子どもなんだからそれくらいするんじゃない」
誉望の意味不明な愚痴に心理定規が珍しく反応した。
顔をあげて振り返ると、どこから持ってきたのか少女は両手に荷物を持っている。
大きく膨らんだ紙袋だった。
「ほら。そんな格好じゃよくないわ。おうたはお休みして着替えましょう」
「おきがえする?」
「そうよ。上手にできるかな?」
「うん。おれかっこいーのがいーな」
服をどさどさ広げる心理定規と素直にそれに従うかきね。
何だかんだ楽しそうに見える心理定規に、誉望の孤独感は増した。
見慣れたセーターではなくなったかきねはすっかりその辺にいそうなちびっこになっていた。
誉望はまだそれを垣根帝督、いやリーダーとは認められない。
彼が尊敬するのは長い脚で余裕たっぷりに歩くリーダーであって、とてとて部屋の中を駆け回るちびっこではない。
「ねーねー。よぼくん、あそぼ」
「……」
少し見上げるくらい威圧と身長のあるリーダーであって、屈まないと目も合わせられないちびっこではない。
「? よぼくん、よぼーばんかくん?」
「うるさい」
おいコラ、と時に胃袋がちぢみあがるくらいドスのきいた一言を放つリーダーであって、舌足らずに名前なんて呼んでくるちびっこではない。
「おねえちゃん、よぼーくんがあそばない!!」
「うるさい! いいつけんな!」
誰かに頼るのではなく利用する。そんな何事も独りでやってのけるリーダーであって、優しいおねえちゃんにすぐ甘えようとするちびっこではない。
誉望はイラついて怒鳴った。
それまでの垣根のイメージとのギャップと、意味不明な状況への不快感といらだちもあってか大きな声だった。
驚いたのか、かきねはびくっとして固まってしまう。
それまでだったら。
眉を寄せても、厳しい目でにらんでくるのがリーダーで、悲しそうに見上げてくるちびっこではないのだが。
流石に泣かれるのは困る。
自分で言ったのもあって心理定規にも押し付けられない。
息を吐いた誉望はやけになってかきねを見下ろした。
「チッ。俺のことは万化様と呼べ。俺はすごく偉いんだぞ」
「えらいのか」
「ああ。『スクール』じゃリーダーの次に偉い。それに俺は念動使いだからな。すごいぞ」
やっと相手にされたかきねだったが、まともに扱われそうにはなかった。
なんだか適当なことを語った誉望は能力で近くの棚にあったものを宙に浮かせるとドヤ顔でかきねを見る。
最初は驚いていたかきねも、誉望が操作しているのがわかると目を丸くして笑った。
「わー……かっこいー!!」
しばらくそんな風にして機嫌を取った。
誉望が能力を披露して自分がいかにすごいやつかを教えるとかきねもそれを覚えたらしい。
「ばんかさますごいな。かっこいーな」
「フン。俺はすごいからそんなに暇じゃない。わかるか」
「うん」
「邪魔するな。あっちにいろ」
「はーい」
遊んでやらないと遠回しに言われたが、かきねはちゃんと返事をしてテレビの前に戻っていった。
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