62:もしも誉望が大能力者の方だったらネタ ◆q7l9AKAoH.[saga]
2018/04/01(日) 06:25:53.98 ID:FOwSYQ0x0
誉望万化。
『念動能力』を操る大能力者(レベル4)である。
何の因果か世界の歪みか宇宙の法則でも乱れたのか、まかり間違って強能力者(レベル3)のままくすぶってしまった挙句、二次元に魂を奪われてオタクに身をやつした少年……ではない。
繰り返すが、誉望万化は大能力者だ。
学園都市の能力者の中でも、大能力と言えば少数精鋭の勝ち組。
その一つ上……超能力者はケタ違いの化け物になるが、学生の尺度で言えば相当な成功者の一人だ。
武装無能力者なんかは、その一言を聞いただけでもガタガタ震えて尻尾巻いてお家に帰るレベルだろう。
しかし、彼は格付けにあぐらをかいたただの自信家ではなくそれに見合うだけの実績も能力もちゃんと備えていた。
念動能力を応用した力を使いこなし、学園都市の暗部組織で暗躍する。
超能力者が率いる組織内でもナンバーツーを自負する実力者。
根暗でジト目、名無しの土星ヘッドギア、セリフも登場ページも少ないとか言ってはならない。
彼は出来る男なのだ。
そんな、エリート出来る男『スクール』のなんでも屋さん焼きそばパンも難なくパシってこれそうな誉望万化はこの世の終わりのような青い顔をして盛大なため息を吐いていた。
ある日のブリーフィング、いつも通り遅れてきた誉望だったが(サボっているのではない彼は多忙な男でもある。むしろ、リーダーにどやされるかもしれないリスクを彼がそう簡単に侵すのか疑問が浮かぶほどビビり…でなく、真面目な少年だ)。
高級感あふれる隠れ家で彼を出迎えたのは、高圧的で俺様でおっかないリーダー垣根帝督ではなかったのだ。
サイズは前の半分ほど、ぶかぶかの赤いセーターを着たちいさなかきねていとくくんごさいだった。
以前よりとってもメルヘンになってしまっていた。
恐偉そうおっかな人使いの荒ストレスが突然舌打ちしないで欲しい……優秀で信頼できる尊敬していたリーダーの身に起きた余りの惨事に、誉望は驚いてその場にいた心理定規を問い詰めたが。
彼女が気付いた時にはもう垣根はおこさまになっていたと言う。
原因も『スクール』総出で調べているがまだわからない。
いつものエージェント、電話の男が何か情報を持っていないか……裏で糸を引いていないかとも疑ったが、それらしい事件も手がかりもほとんどなかった。
直前に口にしたらしい飲み物に何か細工がしてあったのでは、と言うのが一番使えそうなものだったが何かおかしな研究をしていた組織や動きもつかめていない。
と、言うかいきなり子どもになるなんて全く信じられないことだった。
ファンタジーな映画の中に出てくる魔法でもなければありえない事態だ。
おかしな薬や能力でこんなことが起きるとは思えないのだが。
残念なことに幻覚ではなさそうだった。
洗脳か何かで認識を変えられている、と言う可能性も心理定規が撮った写真で潰されてしまった。
写っていたのはやっぱりちびっこだった。
「垣根さんが……こんな、ちんちくりんに」
はあ……と嘆く誉望の目の前では、小さいかきねが大きなテレビをじっと見つめていた。
かかっているのはおこさま向けに着ぐるみが踊ったりおにいさんとおねえさんが歌を歌う……そんな番組だ。
誉望は、頭からゴーグルを外すと首を振った。
彼が集めた情報によると、学園都市では垣根以外にも同じような異変が起きているらしいがまだ事件として大きく動いた様子はない。
数件観測されたものも、その対象になった……子どもの対処に追われてそれどころではなさそうだった。
どこも今の誉望たち二人のように見つかった幼児の子守で手一杯らしい。
そんな苦労や悩みは関係ないんだろう。
小さくなってしまったかきねは一人ご機嫌だった。
「『ぽんぽんぽぽーん♪ だんごっごー♪』」
テレビにあわせて振りつきで意味不明な歌まで歌っている。
「やめろ。垣根さんはそんな下らないことはしない……」
誉望はうわぁ……とうつむくと悔しそうに呟いた。
彼も、それなりにリーダーを尊敬している。
誉望の認める数少ない、自分より上位の存在の中でも垣根は少し別格だった。
垣根帝督は超能力は言うまでもなく、頭も切れて威厳もあって中身も外見も嫌味なくらい何もかも持っている完璧な存在だからまあ仕方ないよな、と納得してしまうような凄味があった。
暗部組織のトップにふさわしい冷酷な表情もよく似合う格好いい奴で、誉望はそんな垣根と居るとちょっとしたムカつきを察したり殺気にあてられて『過去のトラウマスイッチ』がはいってしまい具合が悪くなる。
そんなピンポイントでも影響力絶大な人物だった。
その垣根がどうだ、今やちんちくりんですっかりメルヘンよりのひよこさんだ。
クールな雰囲気も重圧めいたオーラも見る影もない。
たよりない幼児そのものになってしまっては、そんなの嘆かずにいられるだろうか。
誉望はやり場のない悲しみに独り拳を握った。
誉望もそれなりにプライドが高かった。
馬鹿の相手は好きじゃないし、小さい子どもも好きじゃない。
そこに、子どもになった元リーダーがバカっぽいことをしている。
まだ、そのまま大きさだけ変わったような生意気なガキだったら以前と同じように相手が出来たかもしれないが。
これは全然キャラも性格も違いそうな子どもだ。
外見以外は別人のようなのに垣根で。ちびっこ。
何をするかわからない、ムカつく、何かと面倒を押し付けられそうで、気苦労が絶えそうにない……ちびっこ。
原因は同じ垣根でも普段とは違うタイプのストレスがかかっていた。
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