42: ◆q7l9AKAoH.[ saga]
2017/12/31(日) 23:24:35.69 ID:RLcoTAaT0
食事中、心理定規と誉望はそれぞれ自分の頼んだメニューから一品ずつかきねにあげていた。
「それはなに? へー、おいしそー」
とかきねがみんなのお昼を見てにこにこしているのを見てついカッとなってやったが二人とも今も反省していないし後悔もしていない。
それどころか、
「おかえししてやる」と言ってかきねは心理定規と誉望に自分のエビフライを切って分けてくれた。
まさか最推しを分けてくれたとは思っていなかった誉望は驚いてしまった。
そうじゃなくても自分の皿の好きなおかずを他人に食べさせることが出来るだろうか?
なんてこった、こいつぁ天使か聖人かよ……と小さな子どもに感服する。
「しっぽ」
かきねは得意そうに…折り返したセーターの袖の間から、よく揚がった海老の尻尾をだした。
昼飯の残りだろう、残したまま取っておいたのか。
日ごろからオタ友との漫才で大概のことには慣れているつもりだったが。
予想外すぎる嫁グッズの登場に、流石の誉望君もびっくり。
そんな所にしまっていたのがバレたらおねえちゃんはきっと怒るなあ、と微笑ましくなって。
誉望は珍しくにっこりした。
「あー、エビフライさんはかきねさんの嫁っスか。じゃあ……なくしたら大変スから、これあげます」
「わーい! がちゃがちゃだ!」
棚から余っていた空のケースを取り出すと、ふたを開けてかきねの近くに置いてやる。
かきねは丸いケースに海老の尻尾を入れると嬉しそうに指でつついたり回して眺めはじめた。
よっぽど気に入っているようだ。
弁当屋のエビフライであの反応。
立派な、頭のついたエビフライを見せたら飛んで喜ぶのか、怖くて泣くのか一体どちらだろう。
そんな風に楽しそうに遊んでいたかきねはいつのまにか静かになっていた。
心配して探すと、カウチソファに転がって寝ていた。
リーダーが気に入ってよく寝転がっていたソファも、今はよじ登らないといけないくらい大きくて広い。
そんな光景に少ししんみりしながら二人はそっと様子を見ていた。
「わー相変わらず寝顔は平和……っつーかあれっスね。子どもなのにハイレベルってか、イケメンは昔からイケメンなんだな」
「ね、可愛い顔しちゃって。こんなことになって一番混乱してるのはこの子だろうし、疲れたのかな。お腹がいっぱいになったら少しは安心したのかも……」
あら、と言って心理定規はかきねの額をそっと拭いた。
「おでこに汗かいてる。小さい子って体温が高いのね」
「そうなんですか」
「ほら、手もぽかぽか」
「へー……」
心理定規が楽しそうに、眠っているかきねをおもちゃにしているのを誉望は相変わらず少し離れた所から見ていた。
「どう? 触ってみる?」
小悪魔っぽい笑顔で誘ってくる心理定規だが誉望はブンブン大きく首を振った。
「ほら。早くしないと起きちゃう。こんなの、最初で最後のチャンスじゃない?」
それは超レアですね、そうねレアレア、とよくわからないノリでふざけていた二人だが。
最終的にしつこいくらいの手招きに根負けして誉望もソファの前までやってきた。
「俺はどっちかっつうと闇属性なんで、こう言う光系のは駄目なんスよね」
「変な言い訳。私も見てるし、よく寝てるから平気じゃない? ふふ、君と比べるとこんなに小さいのね」
心理定規は誉望をもう一歩近寄らせると手の上にかきねの手のひらをそっと乗せた。
「ちっさ……うー……」
「どう?」
固まってこわごわ小さいものを見下ろす誉望。
彼の言う所ところの、何をしでかすかわからない小さい生きものはすやすや寝ていて、今は危なっかしく動きまわったりはしていない。
心理定規は興味津々と言った風にその様子をみていた。
しばらく、心理定規に設置されたまま手のひらを乗せていた誉望だが、首を振るとそーっと自分の手をどけた。
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