4: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/09(月) 03:52:17.82 ID:CdsvNY5b0
「えっと、ていとくくん?」
てんでダメな誉望と違い、心理定規はにっこりと完璧な笑顔を浮かべて物陰の子どもに声を掛ける。
バイトや日頃の暗部での対応でよっぽど精神力が鍛えられているのか、異常事態にも慌ててみせたりはしない。
「それじゃあご挨拶からしましょうか? はじめましてこんにちは」
「……こんにちは」
「こんにちは〜俺は、誉望万化って言いま〜す」
いつもより無駄にへらへらしている誉望にも、かきねはちゃんと頭を下げていた。
「よぼー、ばんかー?」
「そっスそっス。えっとこっちは」
あれ、何て紹介すればいいんだ? と間があって、心理定規はまたにっこりして子どもに笑いかけた。
「……心理定規よ」
横にいる誉望の腕をぎゅっとつねりながら。
いてててて、と理不尽な攻撃に誉望が小さく悲鳴をあげる。
作り笑顔でそうは見せないだけで、もしかすると彼女の心の中は穏やかではないのかもしれない。
あまり騒がず落ち着いている普段のイメージからはあまり想像できないアクションだったが。
甘んじて攻撃を受けた誉望は離してもらえた腕をぷらぷら振って仕方なさそうな顔をしている。
「そんな凹まなくてもいいじゃないスか。俺が何もやり返せないからってひどくないスか?」
「はーと?」
彼女の能力名、メジャーハートがよくわからなかったのかお子さまは首を傾げる。
「心理定規おねえちゃんっス」
「おねえちゃん」
「もう……いいわ、それで」
ちびっこににっこりそう呼ばれて心理定規は仕方なさそうにうなずいた。
「俺たち怪しいもんじゃ…あるかもしれないっスけど、悪い人じゃ…ないとも言えないんスけど……あああどう説明すりゃいいんだ。どうしたらいいんスか?!」
「もう!! ちょっと落ち着いてよ」
ビクゥ、と目を丸くして固まるかきねを見た心理定規はほら、と誉望をにらんだ。
「大きい声出さないの! ほら、この子が怖がるでしょ」
「気のせいか? 俺よりずっと怖いものがあるような……あ、また隠れてますね。いや、全然見えてるんスけど」
頻繁に打撃系のツッコミをされる側な誉望は、少し怒鳴られたくらいでは別にこたえていないがちびっこには十分すぎたのか。
かきねはまたテーブルの下に避難していた。
家具の脚は残念ながら姿を隠してくれないが隠れている気分にはなるんだろう。
その後ろから騒ぐ二人のようすを見ていた。
「怖がらなくても大丈夫。垣根帝督くんね。私たち、あなたのこと見るように言われてるの。だから心配いらないわ」
「そんなこと言っていいんスか? 任務でもないのに」
状況的に間違ってはないだろうが、いきなりそんなスパイアクション映画みたいなことを言われて、子どもでも素直に信じてくれるのか。
小さな声で尋ねられた心理定規は誉望の方を見てにっこり笑った。
「あら。このままどこかに逃げられちゃってもいいのかしら? 真偽は別として、私たちは安全だってあのこが思えばそれでいいのよ」
とても合理的な、頼りになるお言葉だった。
すっかりいつもの……仕事の気分になっているのかもしれない。
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