かきね「すくーる?」
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3: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/09(月) 03:48:41.62 ID:CdsvNY5b0

「(まさか全身持っていかれ……いや……やっぱ、あれが垣根さんか?)」

疑問をブチ抜く誉望の呟きに二人は隠れ家にふってわいた謎の幼児をじっと見た。
よく見れば。
小さいのが着ているのは、垣根がいつもシャツの下に着ているセーターに似ていた。
参考元の着用イメージの半分以下の大きさで、袖も裾丈も余り過ぎているから何かはわかりづらかったが、きっとセーターだろう。
ぺたんと床に座り込んだ子どもは辺りをきょろきょろ見回したり、ぶかぶかの袖を振ったりいじったりしている。

なんでこんなところに小さい子どもがいて。
なんでおかしなサイズの服を着ているのか。
そして相変わらず当の本人垣根帝督はどこにもいない。
やる気さえどうにかすれば、トラブルが舞い込んでも何とかしてくれそうなあの超能力者がいない。
やっぱりふざけてばかりはいられそうになかった。
リーダー不在の事態は避けたいと考えていただろう二人の気持ちも虚しくあの子どもと垣根が一本の線で結ばれていく。
それどころか……垣根=幼児、とびっきりに意味不明な厄介ごとの予感だ。

「(大分裾が余ってるけど……そうね) なんなの! どこかの研究所が若返りの実験にでも成功したって言うの?」

「シッ! だめだ、気づかれました!」

誉望が慌てて止めようとしたが、心理定規の舌打ちと個人的な不満が乗った文句が聞こえたらしい子どもが振り返る。
誰か……壁の近くでこそこそしている怪しい人たちに気づいたちびっこは。
目があうとぱちぱち瞬きをしてから立ち上がり、そーっと後ずさるように一歩、二歩と動いた。

その場から逃げようとする子どもに心理定規はしゃがんで手招き、誉望は両手を広げてわ〜っと手を振る。
怖がらせないようにしたかったようだが、残念ながら二人ともものすごく怪しかった。

「あは、あははこんにちはっス〜……え、えーっとぼく? お名前は?」

「ていとく。いみは、とってもえらい」

「幾つ?」

ムスっとした顔のていとくくんは黙って手のひらを広げて前に出す。
数えるとちょうど指が五本。

「五歳ってことかな」

「……やっぱりこれ垣根さんっスか?」

「学園都市に何人『ていとく』さんがいるのかしら。もう、何でこんなことになっちゃったの」

「いやーもうこれ夢じゃないか? いてっ?!」

「残念だけど夢じゃなさそうね……って あの子どこに行っちゃったの?」

自分の頬…ではなくいきなり誉望の腕をつねった心理定規がふと見ると、目を離した隙に子どもは逃げてしまっていた。

「なんで俺をつねるんスか。そう言うのは自分で確認しなきゃ意味ないんじゃ」

心理定規の不意打ちをくらって痛がっていた誉望が見回すと小さいていとくはすぐみつかった。
テーブルの下に、脚の後ろに隠れるようにしてしゃがんでいた。

「……だれ、ですか」

丁寧に聞かれて、誉望が垣根さんが俺らに敬語を使った?! 今の聞きました? とあわてた様子で心理定規に確認する。
こっちはまだ現実逃避の途中らしい。

「そこじゃないわよね驚くとこ。ええと、私たちのことわかるかな」

離れた所からぷるぷる首を振るかきね(仮・小さい)。

「縮んで次は記憶喪失っスか」

「もう。しっかりしてよ。小さくなったのは見た目だけじゃないみたい。そんなところにかくれてないで、こっちでお話ししましょう?」

「やだ。しらないひとと、おはなししない」

今度はブンブン音がしそうなくらい大きく首を振る小さいかきね。

「でも一応返事はしてくれますね」

「ほら。この子の方が君よりしっかりしてるじゃない」

ひそひそ話す二人をかきねはじーっと見ていた。
幼い顔が険しくなっている。

「あー、警戒してます! って顔してますよ。不審者を見る目っスよあれ。どうしたらいいんスか」

どうしようどうしようと騒ぐばかりの誉望の横で、子どもの様子をうかがっていた心理定規は…何か考えを探るように額のあたりを押さえてから返事をする。

「ちょっと待って。まだ、うまく……いかないみたいだわ。地道に何とかしましょう。とりあえず説得しないと。なるべく怯えさせないように気をつけて」

「いきなり自信ないんですが」


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