23: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:47:49.99 ID:x6mL7DL40
「……」
「……」
黙って見送る二人の前をボールはひゅーんと飛んでいく。
さっきよりも遠くに飛んで行った。
誰も拾いにいかないまま床の上にぽつんと転がるかわいそうなボール。
「おれなげんのがいーい」
「すんません、ボール取ってきます」
「いってらっしゃーい!」
元気よく見送ってもらい、部屋の端まで飛んで行ったボールを拾って戻る。
と、すぐに誉望の足元にかきねが駆け寄ってきた。
「なー。ぼーるなげる。かしてかして」
誉望は慌てて、持ち上げたボールを上に掲げる。
渡すとまた終わりの見えないサドンデス玉拾いだ。
今度はそれを欲しがってかきねがちょろちょろぴょんぴょん寄ってくるのでそっちの対処も大変だった。
「かきねさーーん。俺もう取りに行けないっスよ」
「なんでだーとってよー」
仕方なくボールを渡すと、今度は抱えたままぷりぷり文句を言われる。
わがままなリーダーの任務に付きあうのも大変だが、今回はそれでも少し楽が出来そうだった。
誉望はポケットから充電器を取り出すと、壁の近くのコンセントの前に座った。
スマホをつないで、ついでにゴーグルも頭に装着する。
「俺の充電は切れちゃいました。体力の回復待ちっス。2分で1回復します」
床に座って三角座りをする誉望。
実際はサボっているだけだが。
そんなことは知らないかきねは、近くをうろうろしながらまだ? まだ? と待ちきれないでいる。
「えー。もうかいふくした? した? ねー、あそぼーよ」
仕方ないので誉望は床に一度ボールを置いてもらった。
それを拾うと、かきねによく見せてから壁に向かって投げた。
「こう言うのはどうスか。壁に投げて、取る。投げて、取ると……」
「いっぱいなげれる」
「そっス。これなら独りでもボール出来ますよ」
「えー。たのしい?」
「やってみます?」
ボールを渡されたかきねは半信半疑な様子で壁に向きあった。
「垣根さん、ふりかぶって……投げた!」
「とう!」
「今度は返ってくるぞ。それを、一度バウンド、屈んで……」
誉望がいちいち解説を入れて、最後は見事にキャッチ。
かきねは笑顔でボールを掲げた。
「とった!」
「やったー。じゃあその調子でやってみましょう」
「うん」
良い返事をしたかきねに安心して、誉望も一人で遊びはじめる。
今やっているゲームの今回のイベントは無駄にステージが多く解放条件も入り組んでいて地道に数をやらないことにはなかなか進まないのだ。
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