22: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:40:15.48 ID:x6mL7DL40
その後。
かきねの誉望への態度は少し変わった。
おねえちゃんほどではないが、にこにこしてなにか見せたり話しかけにくるようになった。
今は二人だけなので、相手をしてくれるのが誉望だけだからかもしれないが。
ゲームなら、イベントをこなして好感度が上がったのを喜べるが、素直にそうは出来ない誉望の内心は複雑だ。
「ねー。てれびみてもいーい?」
「いいっスよ。なんか見たいのつけてください」
「うーん。おれよくわかんない。よぼーしってる?」
「俺も夜遅くない子どものテレビはわかんないっス」
番組表をみているとかきねは前に教育番組ならみたことがある、と教えてくれた。
少し検索すると、その番組内で使われている歌や踊りもキッズチャンネルの中に見つかった。
「これはなんスか? 『ありがとさんさんの歌』」
「『うーきうーきぴょんぴょーん♪ ありがーとおーさーんさんさんふってくるー』だぞ」
知っている歌らしく、かきねはソファの上でぴょんぴょん跳ねる。
「へーえ。二番もあるんスね」
「こっちのはね。『げーんきかいふーく♪ おつ・かれ・さん!』だ」
「さすが垣根さん、謎ダンスもキレッキレっスね」
さーんさんさんじゃあまたねー♪ と、頭の上に両手で三角形を作る謎の踊りも披露してくれたので誉望も拍手をおくった。
「ねーねー。おねえちゃんは?」
「心理定規は今お仕事っスよ」
「しょうがないなー。じゃあごーぐるとあそんでやーろお。よくきけ、いまからおあそびのにんむだぞー」
「わーいやったー。何するんです?」
「ぼーるあった。やろ」
かきねがまた何かみつけてきたらしく持ってくる。
今度は「ボールのようななにか」ではなくただの柔らかいゴムボールのようだった。
誉望の持ち物ではなかったから垣根か、残りの女子のものだ。
多分後の二人が美容系のトレーニングにでも使うものだろう。
「キャッチボールっスか? いーっスよ」
よーし、と両手を体の前で構える誉望だったが。
「よーし。ごーぐる、とってこーい!」
全然違う方向に勢いよく飛んでいくボール。
誉望が期待したのとはどうやら違う遊びだった。
「よしいくぞー」
「ちょっ……ま、もッ……無理っス」
「えー。なげるぞ。なげちゃう。えーい!」
ボールを取ってこさせるとかきねはすぐにまた投げる。
野球部の練習か、と言うくらい走り込みをさせられて誉望は座り込んだ。
短い距離を何度も繰り返してすっかり息があがってしまった。
「きゅ、きゅーけーしましょう。俺もうくたくたっス」
ぜいぜい言いながら、直前に飛んで行ったボールはその場で能力を使って回収した。
するとそれを見ていたかきねが、
「いままほうつかったろ! ずるいぞ」
「チートじゃないっス。俺の実力です。何だこの間髪なしの連続往復シャトルランか息がもたない」
「えー。やめちゃうのか? おれたのしくなってきたのに」
「ずっと走ってる俺はしんどくなってきました。ほ、ほら……垣根さんも取ってきませんかー」
そう言って今度は誉望が投げる。
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