21: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:36:36.38 ID:x6mL7DL40
「そっかーよぼーはごーぐるのまほーつかいか。じゃ、こーどねーむはごーぐる!」
「いーっスよもう俺はそれで。なんか…いつもの感じっスね」
どうやらネーミングセンスは縮む前とあんまりかわらないらしい。
ごっこ遊びなのか、急にあだ名をつけたかきねは両手をむん、と組んで真剣になにやら考えはじめる。
「おれはなんにしよっかな〜」
「垣根さんはリーダーでいいんじゃないスか。そう、実は垣根さんはとある組織のリーダーだったんスよ!」
「ひみつせんたいなのか! うーんと、やだ」
「えっ、リーダー嫌なんスか?」
「わかってないなごーぐる。なんだかわかんないのがこーどねーむなの。せんたいのりーだーはね、やってもいいよ」
「そう言うもんスか。確かにリーダーってそのまんまっスねえ」
紙とペンがほしいと言われて誉望はノートと筆記具をかきねの前に並べた。
かきねは小さい手で鉛筆を持つとぐにぐによくわからない線をひきはじめる。
お絵かきかな? と遠目に様子をみていた誉望は気を抜いて、スマートフォンを取り出した。
我慢はしていたがゲームのイベントの最中に参加を完璧に無視するのは難しかった。
「ねー。ごーぐる」
「はいっス」
「へーきか? おなか…いたい? もういたいのとんでった?」
「へ? あー……大丈夫ですよ。元気いっぱいっス」
話しかけられた内容が予想外で誉望がスマホから顔を上げるとかきねはおえかきの手を止めてこっちを見ていた。
誉望がすっころんでひどいことになったのを子どもなりに気にしていたらしい。
実際、かきねは何も悪くない。
いくら誉望の自業自得臨死の自殺点といっても、それをぶつかった子供に説明するのはややこしい。
ただかっこわるく鼻血をだしただけなのに心配してくれていたなんて、小さい垣根はやっぱりいい子のようだ。
「おれが、ふるぱわーでたっくるしたからだよな。ないぞーくちからでなかったか?」
「いやー小さい垣根さんだから平気でしたよ。いつものだったら金メダル級の威力どころか死んでましたねー」
「そっか。じゃへーきだ。こんどはちゃんとてかげんしてやる」
「手加減はありがたいんですが、タックルはちょっと…」
普段の垣根に全力でぶつかられるなんて、トラックにノーブレーキで突っ込まれる方がはるかにましだろう。
誉望は、はははと寂しく笑った。
それも元に戻れなければ無理な話なんだとつい考えてしまった。
ふと、
「あのね」とさっきまで元気よく喋っていたかきねは急に低いテンションで話しかけてきた。
「? はいっス」
誉望が返事をしてもなかなか口を開こうとしない。
どうかしたのか、と誉望が不安になった次の瞬間だった。
「……ごめんね。いたかったな」
ぺこ、と頭を下げられた。
うわあなんだこれかきねさんがあやまってるぞ? あたまを、え? かきねさんのくちからしゃざいのことばがわーあしたは槍が降ってくるんじゃないのか?
と誉望は一瞬で失礼な想像をしたが。
残念ながら、ありえない非常事態ならそれより先にまさに目の前で起きている。
これ以上の悪いニュースなんてそうそうないだろう。
「びっくりしたけど平気っスよ。ほーら元気ですよ」
「じゃなかなおしか?」
「なか……あ、仲直りスか? こんなのへっちゃらっスよー俺慣れてますから気にしてないですって」
「わるいこはごめんなさいするだろ。いけないんだ。おれ、したからなかなおしできたかな」
「そっスね。偉いっスね」
「えらいか」
「垣根さんスから」
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