20: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:30:29.00 ID:x6mL7DL40
「『れっど! ぶるー! ぴんく! ごーるど! く〜ろ〜も〜いる〜♪』」
「『クワガタ将軍やっつけろーみーんなーのへーいわーをまもるーためー』」
「じゃっじゃーん♪ ねえ。よぼーおうたへただな」
「垣根さんはお上手っスねー」
二話続けてみて、かきねはもう劇中のテーマ曲を覚えてしまった。
よっぽどスーパー戦隊が気に入ったらしい。
褒められると嬉しそうにステージ…ソファから飛び降りる。
「へへへーだろ。ねーねー、なんでかぶとくろはつのがないの?」
「あー、たしかカブト虫の角はオスにしかないんスよ。だからじゃないっスか」
見ていたのはカブトムシをモチーフにした戦隊ヒーロー。
その中でもカブトKUROは女の子の戦士だった。
ニンジャ風のクールなキャラで真面目、ストレートの黒髪とちょっと誉望の気になるタイプだったので特徴を覚えていた。
そっかー、と説明に納得した様子のかきねだったが。またその目が不思議そうにぱちぱちする。
「あれれ? ぴんくはおんなのこだけどつのあるよ?」
「……あれ? 本当っスね」
そう言われてみれば、確かにそうだった。誉望も首を傾げる。
基本がゲームジャンルのオタクなので特撮はほとんど管轄外だ。
「へー最近の特撮は男の娘キャラもいるのか……なんで青ピ君はこう言う時に限って連絡つかないんだ?」
誉望は最初、その辺も詳しそうなストライクゾーン未知数のオタク友達に聞いてみようとしたが、返事がちっともこなかった。
男の娘もオッケーと豪語する青髪ピアスなら必要以上に詳しそうだしなんなら、
「なにセンセそっちも興味あるん? よっしゃ今度ニチアサ通しで上映会しよか?!」とやばいテンションで食いついてきそうだったのに。
あてが外れて誉望は自分のパソコンで検索していた。
どおりでファンアートやSNSのコメントにKUROとぴんく♡の組み合わせが多い訳だ……と関連したいくつかのワードをマイナスに設定しながらカブトレンジャイのデータを眺める誉望。
その頭上にかきねも気付いたらしい。頭に乗ったまるいものを指さす。
「あ。これっスか。『ゴーグル』っス。メカですよ〜」
「ふぅーん。みして?」
誉望は「ゴーグル」を外すと、能力でかきねの近くまで動かす。
本人は単にあまり近寄りたくなかったのだが相手には違ったイベントとして反映された。
念動力を目の前で展開されたかきねはそりゃもう目をまるくしてはしゃいだ。
「すごーいな? さっきもだ。なんでふわーってするの?」
「ふっふっふ……実は俺魔法使いなんスよ。クラスのみんなには内緒だよ?」
「まほーつかい……!」
誉望に向けられる視線がきらきらしたものに一変する。
さきまでのうさんくさいへんなおにいちゃんは、この一瞬でなんかすごいやつにランクアップしたのが傍目にも分かる。
「あ。いや、俺だけじゃないっスよ? ここには魔法使いみたいな人がいっぱいだし垣根さんももうちょっとしたら……あれ。やっぱり今も能力は使えないのか?」
あまりにピュアすぎる眩しさに、誉望はあわてて説明を付け足した。
同時にあることに気付く。垣根の『未元物質』は、今はどうなっているんだろう?
「これでへんしんする? まほーれんじゃーになる?」
「変身はしないっスね。被るとパワーがアップするんス」
「ぱわーが……へぇえ!」
すごいなー、とリング状の装置を持ち上げるとかきねは自分の頭に被ろうとした。
首も通過して肩の上に引っかかってしまう。
わなげで当たった景品みたいになってしまったかきねはぐるぐる首の周りで装置を回し、コードを持ってみたりと観察を続ける。
「垣根さんにはまだおっきいっスね。ああ! それはひっぱっても取れないっス!」
「……かっけー」
ひーろーみたいだ! と尊敬のまなざしを向けられて、誉望もちょっと得意げにしていた。
「俺の秘密兵器っス。見終わったらそこに置いといて下さい」
「すっげー。はい! おいたよ」
「はいどうもっス」
ひょいっと能力で「ゴーグル」を回収する。
それにまた、かきねはすごいすごいとはしゃいでいた。
小さな子どもの夢のためにも、実は誉望はヒーローじゃないし他のみんなも正義の味方とは逆のポジションなのは秘密にしておいた方がよさそうだ。
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