19: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:24:46.93 ID:x6mL7DL40
「もういいっス。何言っても出かけるんスよね。で、どれくらいかかりそうなんですか」
誉望はいっそ絶望したような諦めきった態度でこの後の予定の確認をしようとしたが心理定規は、
「あんまり急かすとモテないよ」と答えをはぐらかした。
制限時間不明のまま誉望は一人で超難クエストに臨まなくてはいけないが、げんなりした表情を見る限り覚悟はちっとも出来ていない。
さすがに放っておけなくなったのか、心理定規は頬杖をつくとじっと誉望をみつめた。
「大丈夫? 君の心の中を読めば嫌がるのもなんとなくわかるけど、なんだか意外だわ。子どもの視点には私たちの中でも一番近そうなのにね」
誉望は子供が、と言うより小さい生きものが苦手らしい。
触れないし近寄られてもだめとなると相当だ。
「犬猫や動物も見てる分にはいいんスよ。でも近寄れないんで。ひどくなるとめまい、息切れ、手が震えて汗は出るし頭痛と吐き気とあとえーっと」
いいわけっぽさを増した説明に心理定規は少し呆れて首を振る。
「血圧が急に変わって出血するの? じんましんとくしゃみは?」
「アレルギーじゃないんでそこは平気っス。本当に、見てるだけの子守しか出来ませんよ俺」
「それで充分よ。それに君も心理距離と実際の距離の差を埋めるいいチャンスかもね。誉望おにいちゃん、がんばって〜?」
本人の苦手・不快感以上のひどい症状がでないことを聞いて大丈夫そうだと判断したのか。
心理定規は軽やかに手を振って出かけて行った。
「なんだかんだでちびっこ丸投げされたぞ。マジかよ……はー」
「ね。あそぼ?」
がっくりしている誉望の前に原因のリーダー様がやってきた。
さっき挙動不審でぶっ倒れた誉望に、まだ何か心配しているのかちょっと離れた所から声を掛けてくる。
「お人形で遊べます? できたら…ひとりで」
「えー。あきたあきたーあきちゃったー。よぼーあそぼーよ」
やだやだ、と文句を言うちびっこは元があの垣根とは思えないくらい可愛らしい。
見ている分には可愛いものでも、つきあわされる方は大変だ。
「と、言われても小さい子のおもちゃなんて無いしな。ゲームはまだ早いだろ」
誉望の手持ちで遊べそうなものと言うと、携帯ゲーム機くらいだ。
幼稚園児くらいのお子様にやらせるには難しそうだ。
「黒ひげどこにしまったっけ? あー、別のアジトか?」
室内で自分のエリアを検めていたが小さい子でも遊べそうなおもちゃなんてそう簡単にみつからなかった。
さっき不用品をひとまとめにした時も、お目当てのアイテムは出てこなかったからここにはおいていないのだろう。
トランプやオセロはコンビニでも売っているが今は外出できない。
一緒に出掛けるのはもっと無理だ。
そういう簡単なゲームならタブレットでも出来るだろうが……多分隣に並ばないとやりづらいだろう。
なるべく遠くにいても成立する遊びが必要だ。
鬼ごっこなんか以外で。
今ちびっこに追い回されたら、誉望はきっとガチで泣いてしまう。
がさごそテーブルや棚の周りをうろついている誉望に、かきねはさっき貸してもらった小さいフィギュアを見せた。
「これは? おにんぎょだよ?」
残念ながら、誉望も好きなアニメキャラでおままごとやお人形遊びが出来るほど強い心は持っていなかった。
「それは大きいお友達のおもちゃです。本当は集めて飾って崇めるものっス。じゃあ……なんか見ますか?」
「てれび? いいの?」
何とかあんまり関わらずに子守をやり過ごそうと出したプランだったが、かきねは意外にうれしそうな反応を見せた。
「動画サービスならいつでも番組見放題っスから。えっと、確かキッズチャンネルが……あ、カブトレンジャイなんてありますよ。ほーらそこ座っててください」
ソファにクッションを集めて、リモコンでチャンネルを変える。
かきねの視聴環境を整えると誉望はいつもの自分の椅子に座った。
「よぼーみないの?」
「俺はここから見れます。垣根さんは……そうだな。そこの特別席っス」
「すぺしゃるか」
かきねが嬉しそうにクッションを抱えたところで、スーパーヒーローたちの活躍が再生された。
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