かきね「すくーる?」
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18: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 03:19:17.80 ID:x6mL7DL40

「鼻血くらいじゃ死なないから大丈夫よ。ほら、もう離してあげて。危ないからあっちに行ってましょうね」

とても冷静に、誉望から離れるように指示を出した。

「…………ゴホッ! うげ、むせた…いやあの、垣根さんじゃなくても出ます。ストレスキャパを超えると血管が悲鳴をあげるシステムっス。なんか事故って吐血しましたけど、別に目や耳から出ても俺は気にしないっつうか絵面ならそっちのがインパクト大でいいなあっつうか……俺は、どこかの青頭みたいに変態では御座いません。もちろん念のため」

鼻からの出血は喉から口の方に抜けたようだ。
げほごほ言いながらたかが鼻血に長々と意味不明な解説をつけていた誉望だが、かきねが離れてしゃべっているうちに少し顔色は良くなっていた。
本人もパニックで発言がめちゃくちゃになっているが、要は最後の一言が言いたいのだろう。
小さな子どもとオタク少年の組み合わせは、屋外で第三者に発見されたらそれだけでも通報されそうな状況に見えなくもない。
ついでに自覚どころか経験済みらしい口ぶりが悲しい。

「わかったから。はい、口の周りがホラー映画みたいよ」

「すんません」

ウェットティッシュを差し出されて、誉望は口元を拭いた。
濡れた紙の上で伸びた血の色は確かに中二っぽいインパクトのありそうな、そこそこの出血に見えた。

「とりあえずあの子にはここに慣れてもらわないと。こんな状態で勝手にどこか行かれても困るし。でも…困ったわね。私ちょっと出かけないといけないの」

心理定規に助けられて、ほっとしていた誉望の顔がそのまま固まった。
用事があるとは言っていたが。
この状況でバイトに行くとは……彼女なら言いそうだ。
なんだ。
問題ないじゃないか。
流れとしては。
無言のノリツッコミなのか思案、理解、笑顔で納得、まで一人で百面相をしていた誉望は最後に必死な様子で激しく頭を横に振る。

「いや、無理っスよ? 俺に、垣根さんの面倒を? いつものでも十分大変っスけど、それでもまだあっちのがマシな気がするんスけど心理定規さん!!」

できませんって! と拒否する。
誉望が嫌がるのは心理定規も分かっていただろう。
それでも彼女はにっこり笑って、
「ごめんね」の一言で話を続けた。

「なんとか時間はずらしてもらえたんだけど予定自体は断れなかったのよ。それと、後であの人にも連絡しておくから。私が戻るまでの間でいいの、あの子の相手をしててちょうだい。念のため玄関に鍵もしておいてね」

「えーっそんな! 心理定規……後半は代わりにしときますから、なんとか早く戻ってこれませんか」

あの人、『スクール』の上司にあたる謎の人物。
暗部の指令を寄越す顔も知らない電話の男だ。
組織のリーダーがこんな不可解な状況にあると知ったら暗部は、いや学園都市のもっと大きな部分にも大混乱だろう。
何しろ超能力者の一大事だ。
事態を伏せてはおけないだろうし、そこでもひと波乱ありそうな重要な連絡だ。
心理定規が説明し、上手くことが運ぶように話を進めるのが得策だろう。
だが。
普段パシリ扱いされている誉望だが、この問題にあえて名乗りを上げる。
我が身かわいさで、お子様と隠れ家に放置されたくないがために。
それをとっくに見透かした心理定規はにこりと笑う。

「じゃあ今現在の組織内の情報の把握と各部への伝達、この問題へのリスクヘッジに基づいた有効な対策を考えて『彼』と話しあって、必要な指示を出してくれる? リーダーとブレーンと、兼ねる役割は他にもあるけど、複数作業の同時進行は君も得意よね」

「すんません。もうちょっと戦略ゲームみたいに言ってもらえますか」

「もう。あんまりふざけないでよ」

「垣根さんだって少しくらい一人でも大丈夫じゃないスか? 小さいのにあんなにしっかりしてるし平気っスよ。いや、ちょっと不安要素はありますけど。グレーに近いオフホワイトっスけど」

「あの子に何かあったら……それが起きてからじゃ遅いの、わかってるかな?」

「俺がショック死して自害して更に心理定規にオーバーキルされるのは何となく理解しました」

少なくとも三回自分が死ぬ予測を立てた誉望は最終的に首を縦に振った。
今は無力なおこさまになってしまったリーダーの保護は『スクール』の最優先事項になる、正規構成員としての自覚は誉望を逃げちゃダメだ!とその場に押しとどめることに成功したようだ。
それを見た心理定規は、どこからか出した銃を手にしたままにこにこ笑っていた。




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