鷺沢文香「偽アッシェンプッテルの日記帳」
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6: ◆FVs4HrY/KQ
2017/10/06(金) 20:47:56.81 ID:7+Q2lD4p0
言われるままにベッドに入り込んだ私でしたが、決して不承不承ではなかったことは認めなくてはいけません。
降って湧いた異常な状況に、困惑だけでなく不思議な高翌揚感を覚えていたのですから。

毛布に包まれると、毛布とマットレスに滲み込んだPさんの体臭のせいで、まるで前後からPさんに抱きしめられているかのような心地でした。
薄く残った洗剤の香りの他に、汗と皮脂と、そして、男臭さとしか説明不可能な匂いが混在していて…。
変態的だとは自覚しながら、気持ちの高ぶりを抑えることが出来なかったのです。
総体としてはやはり臭くて…でもそれがPさんの体の匂いが滲み付いた結果であるという一点だけで、その臭さこそが身震いするほどに芳しく感じられました。

彼の匂いをこれでもかと体内に取り入れて、冷静でいられるわけがありません。
寒がりを装って毛布を鼻を覆うまで引き寄せ、深呼吸を繰り返しました。
毛布で見えないのをいいことに、マットレスをまるでPさんの胸板であるかのように両手でまさぐりました。
スカートの裾を膝までたくし上げて、脛で感じる毛布の肌触りに、Pさんの手を重ね合わせました。
挙句、寝返りを打つフリをして枕に唇を付けてしまいました。

自分の浅ましさ、いやらしさにはほとほと呆れてしまいますね。
それが私の本性だというのに、そのときはお酒の所為にしていたのだからもう手の施しようがありません。

鼻がPさんの匂いに慣れてくる頃には、体の感覚にはまだ靄がかかっていたものの、頭の動きは素面同然に回復していました。

そこで歓声が響いたのです。
毛布から目だけを覗かせてみると、部屋の中央ではローテーブルを囲んで相変わらず大盛り上がり。
立ち上がった状態で大きなジョッキグラスを呷るPさんを、皆さんが囃し立てています。
黄金色に輝くお酒がものすごい勢いで減ってゆき、そして一滴残らずPさんの喉へと消えてしまいました。
Pさんがグラスを空にした証としてこれ見よがしにひっくり返すと、また一際大きな歓声。

しかしながら、Pさんの栄光はすぐに終わりを迎えました。
グラスをテーブルに置くと、崩れるようにその場で突っ伏してしまったのです。
それを見てまた大笑いをする4人の先輩方…。
笑い声に紛れて“もう無理です、これで勘弁してください”と、愛しい人の降伏宣言がか細く聞こえました。
にもかかわらず、無慈悲な魔手が追い打ちをかけようとしていて…。(無邪気な魔酒?)

そこに割って入ったのはやはり美波さん。

先輩方にも物怖じせず、しっかりと諫めると同時に、Pさんへ水の入ったコップを差し出しました。
しばらくはPさんをめぐる美波さんと先輩方の攻防がありましたが、次第に彼らの争点はPさんをどこに寝かせるかという問題に移ったようでした。
先程の私の時と同様、いやそれ以上に、美波さんと他四人が論を戦わせていました。
詳しい内容は聞き取れなかったのですが、ソファとベッドが候補になっていることだけは分かりました。
ベッドには既に私が寝ているというのにです…。

当時の私は、ソファとベッドのどちらになることを望んでいたのでしょう…? 今ではもう忘れてしまいました。


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