8: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:35:54.25 ID:h7xFOhfZ0
何度も見た夢の中、真っ白な世界には相変わらず扉が佇んでいました。
「でも鍵は……」
大切な鍵を失くしてしまった私には何もできません。
ただただ、この夢から覚めるまで待つことしかできませんでした。
「はぁ……、あれ?」
深くため息をつくと、胸の方に何か硬いものが当たっているのを感じます。
この感触を私はよく知っています。だって……それはいつも身に着けている鍵と同じものだったのですから……
「もしかして鍵かもっ!」
希望に胸を膨らませ、その正体を確認しましたが……
「鍵が……折れてる……」
確かにそれは鍵でした。
ただ、鍵は途中で折れていて持ち手しかない不完全な形でした。
「これじゃあ扉は開けない……」
……ピキッ
希望から一転、絶望に叩き落された気分でした。
ピキッ……ピキッ……
一生この扉が開かれることはないのでしょうか。
握られた鍵は私の心を映すかのように鈍く輝いていました。
「もうダメなのかな……」
私の心がさらに暗く、よどんだ時……
……パリーン!
そこら中でガラスの割れたような音が響きました。
「えっ……?」
ひび割れは世界全体に伝わっていき、さっきまで真っ白だった世界は一転、影に覆われたかのように真っ黒になってしまいました。
それはどのような輝きも吸い込んでしまうような黒色、折れた鍵に残っていたわずかな輝きもその黒色に奪われてしまいました。
世界が割れる影響は私の足元も例外ではなく、立つことのできなくなった私は真っ逆さまに落ちていって……
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
世界が崩れている中でも扉は相変わらず同じ場所に留まっています。
薄れゆく意識の中で私は、遠ざかっていく扉に目を向けました。
(扉が……光って……)
そして、私の意識は途切れてしまいました。
39Res/44.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20