4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/10/03(火) 23:44:20.62 ID:vJhWZrnk0
「俺、場違いじゃないですかね?」
「大丈夫よ、男性客だっていないわけじゃないらしいから」
「と言われても肩身が狭いですって」
「さっきまでのかっこいいPさんはどこにいったのかしらね」
ふふっと、楽しそうに笑う彼女を見るとここに来た甲斐があったのかもしれない。
女性の好みそうなレストランは何度入っても落ち着けた例がなく、今日も変わらず人目が気になるのは俺の性分のせいなのかな。
「Pさんはどれにするの?」
「レナさんのおすすめでお願いします」
「そう。お願いされるわ」
俺は羽織っていたスーツを隣にかけると一つ大きく息を吸う。肺に貯まった息をゆっくりと吐き出していく。
すーっと抜けていくのは呼気だけじゃなく、不安とか焦りとかそういったマイナスなものも一緒だなんてただの気のせいかもしれないけど、この一連の動作が自分を保っているのだと思うとどうしても止めるわけにはいかない。
「いつ見ても可愛いわよ、それ」
いつの間にか注文を終えた彼女は穏やかな笑みを湛えている。
「ただの深呼吸なのに、いっつも怖がっているってわかっちゃうとね」
「あんまりからかわないでくださいよ」
「ええ、ごめんなさいね。つい見ちゃうの」
人の印象なんて段々と変わっていくもの、そう身をもって教えてくれたのは彼女だった。
最初に会った頃は自分がアイドルになることをギャンブルだと言い、俺のことをギャンブラーだと言った。それが今では本当は小心者で毎日が精一杯な人だといつの間にか知られていた。
度胸のある人が彼女は好きと言った。今では知れてしまってそんな人間ではないのだとわかっているはずなのに、彼女が一緒に頑張ってくれてるのには何か理由があるのだろうか。
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