162: ◆hfr5rHILM6
2017/10/03(火) 19:56:29.33 ID:/oXUkmlp0
「……そういえば、ゆいがはまさんはどうしたのかしら。あさからすがたがみえないのだけれど」
ロリノ下の声が聞こえて、ふと我に返った。
事実をそのまま伝えるのは容易だが、余計な心配をかける必要もないのではないか。二つの相反する考えを同時に思い浮かべて、しかし俺は正直に先ほど見たことを伝えることにした。
雪ノ下に任せておけばどうにかなるだろう、という考えもあったのかもしれない。
「……由比ヶ浜は、朝起きたら俺の布団に潜り込んできてたよ」
「…………あらそう」
ちょっとむくれて、こちらをジト目で睨んでくるロリノ下さん。いやそういう反応を待ってたんじゃなくてね。
「あいつ、泣いてたみたいなんだが、何か知らないか?」
「ゆいがはまさんが? ……いいえ、わたしはなにも」
ロリノ下は俺の言葉を聞いて、少し目を見開いた後、考え込むような仕草を見せた。
「俺は今から学校に行かなきゃならんから、後で由比ヶ浜と話してみてくれないか。何か悩んでることがあるのかもしれないし」
「あら、いがいにやさしいのね」
「そんなんじゃねぇよ、ただでさえ行動が幼くなってんのに拗ねられたら面倒なだけだ」
「ひねでれとはよくいったものだわ」
ロリノ下がクスクスと笑い声を漏らす。何これちょっと恥ずかしい。
顔を背けながら、食べ終わった食器を片付ける。
歯磨きや着替えを終えて、壁の時計を見ると、そろそろ出発してもいいくらいの時間帯になっていた。
「それじゃ学校行ってくるわ。外にはなるべく出ないようにな。俺もなるべく早く帰るようにはするが、分からないことがあれば小町か俺にメールか何かで聞いてくれ」
「ええ。いってらっしゃ……」
そこまで行って、ロリノ下さんははっと気が付いたかのように口に手を当てると、顔を赤くして顔を背けた。
え、なにこれ。お前に言ういってらっしゃいはねぇ! ってことなの?
どうにも釈然としない気持ちを抱えながら玄関のドアに手をかけると、後ろからぼそぼそ声のいってらっしゃい、が聞こえてきた。
どっちが捻デレなんだか、と、苦笑を浮かべながら、俺は玄関のドアを開け放った。
「ひゃっはろー、比企谷君。雪乃ちゃんいる?」
閉めた。
658Res/445.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20