163: ◆hfr5rHILM6
2017/10/03(火) 20:25:28.18 ID:/oXUkmlp0
どうやら俺も幻覚を見るようになってしまったらしい。疲れ目って怖いなぁ。
始まりの村こと自宅から出たら即魔王とエンカウントなんてそんなことが現実にあり得るわけないじゃないか。
どんな糞ゲーだよ、ってよく考えたら人生って糞ゲーだったわ。認めちゃうのかよ。
とにかく、危うく止まりかけた呼吸を深呼吸をして整えて、1,2,よし。
もう一度ドアを開けた。
「朝からお姉さんが訪ねて来たって言うのに、いきなりドアを閉めるとか酷いんじゃないかなぁ」
やっぱり居た。なんだこの糞ゲー。
玄関の軒先でいきなり雪ノ下さんと遭遇するとか心臓に悪すぎるので本当にやめてほしい。
俺はどんよりとした気分をすべてため息に乗せて吐き出した後、強化外骨格スマイルを浮かべている雪ノ下さんに向き直った。
「……雪ノ下に会いに来たんですか」
「そそ。中入っていいかな? いいよねお邪魔しまーす」
「まだ返答してないんですが……」
俺の脇をすり抜けて雪ノ下さんが家の中に入っていく。どうせ俺がダメだと言っても入っていたのだろうから、先ほどの問いかけに意味などないのだろう。
俺は半ば諦観しながら、家の中に振り返った。しかしそこには、先ほどまで佇んでいたロリノ下の姿はない。
「あれ? 雪乃ちゃんいないね。まぁこの家の中にいるのは分かってるし、ちょっと家の中探してもいいかな?」
「……ご自由にどうぞ」
どうせ断っても意味はないのだろうし。
雪ノ下さんは、雪乃ちゃーん出てきなさーいここに居るのはお姉ちゃん知ってるぞーとか言いながら家の中を歩き回っていく。
なんだよあれ、隠れてる側からしたら下手なホラー映画より怖いだろ。
俺が背筋に悪寒を感じながら動向を見守ってると、暫く経ったのちに、雪ノ下さんに抱えられたロリノ下がこちらに歩いてきた。
いつの間にかちゃっかりよそ行きの服に着替えさせられている。
「それじゃ雪乃ちゃん借りてくねー。もーかわいいなぁ雪乃ちゃんは。楽しみだなぁ楽しみだなぁ」
雪ノ下さんは珍しく心の底からの笑顔を浮かべながら、ロリノ下に頬ずりしている。ロリノ下さんは瞳に深い絶望を称えながら借りてきた猫のように大人しくしていたが、俺の隣を通り過ぎる一瞬、その瞳に光が戻った。
――助けて。
――すまん無理。
見事なまでのアイコンタクトの後、恨めしそうにこちらを見る幼女の視線を背に受けながら清々しい表情で登校していく男子高校生の姿がそこにはあった。
というか俺だった。
658Res/445.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20