59: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/04(水) 18:30:49.85 ID:t9VFdT8i0
「うさぎさんだよ」
「そううさぎ。それなのです」
貴音がスッと指をたて、説明口調で話し出す。
「秋が来て、夜のうさぎは月恋し。……十月四日、本日はいわゆる十五夜を迎える日となります。
夜には空に浮かぶ月に、団子やススキをお供えし――」
「あー、お月見かぁ。そう言えばそんな時期だったね」
「響……。どうして二人がこのように、面妖な衣装を着ているかを忘れてしまっていたのですか?」
「えっ」
「ちょうど放送日が重なるからと、急遽企画が変更され――」
「あ、ああそう? そっか! それでこんな変な企画になったっけ」
「はぁ……。真、しっかりしてください」
呆れたようなその台詞に、ちょっとイラっとはしたけれど……まぁいいや。
うさぎ跳びしたのは自分一人だけど、貴音も番宣用のプラカードとか持って色んな人に見られてたし。
(自分なら、恥ずかしくって死んじゃうぞ!)
お互い今日のお仕事は、大変だったと思うんだ。うん。
「とにかく、今宵は労も労おうと。たまには心静かに月を見て、二人で夜を過ごすのも悪くないかと思ったのです」
なるほど、そういう事なら話は分かる。
貴音は月に関心があるみたいで、時々夜空を見上げては切ない顔をしていたし……。
きっと、お月様のことが好きなんだな!
だからこの手のイベントには目が無いんだと、自分の中で解釈する。
「それじゃ、いいよ。お団子用意して待ってるから」
「まぁ、それは実に楽しみな――」
「ああでも、お月見だからご飯の準備はいらないよね? 貴音も食べてから来るんでしょ?」
そう一応聞いてはみたけれど。
予想通りと言うべきか、貴音は急に険しい顔になって。
「いえ、食事は食事、月見は月見。それとこれとは話が別です」
うん、まぁ、そうだよね。……冷蔵庫、中身は十分あったかな?
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