51: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/10/02(月) 20:28:51.78 ID:vPsX6YiQ0
机の上に身を乗り出した、美奈子に迫られ答える男はたじたじだ。
口の中からレンゲを引き抜き、目の前の皿に盛られている美奈子特製かに玉炒飯の山を崩しながら。
「ぱらっとした米に程よく絡まるあんかけと、ふわふわ玉子の掛け布団。
まるで質の良い睡眠のようであり、気分は正に夢心地。ちりばめられてる具にしても、
椎茸、ニンジン、ネギにエビ、定番どころはキッチリ押さえ、旬の筍だって入ってる」
「彩りのグリーンピースも忘れないであげてくださいね」
「しかもカニがな、本物だし」
「そりゃ、カニカマなんて出しませんよ。お店の料理なんですから」
美奈子が口を尖らせ言う通り、ここは中華料理の専門店。
その名をズバリ「佐竹飯店」そう! 彼女の実家の店だった。
入り口からは目の届かぬ、奥まった席に座る三人。
何をしてるかと説明すれば、並んで昼食真っ最中。
グラスの水を流し込み、プロデューサーが美奈子に言う。
「でもね? 量がね? ちょっとねぇ……」
「男の人には物足りません?」
「否! 絶妙過ぎてて食うのが怖い。あと一口、もう一口」
そうして男が皿の上の、三分の二をその胃に納めて嘆息する。
「この皿が空になった時、必ずこう思う予感がする。……ああ、あと少しだけ食い足りない」
「そこでおかわりじゃないですか!」
「山盛り炒飯をもう一皿? ……勘弁してくれ、死んじまうよ!」
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