44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/09/29(金) 23:03:29.55 ID:6cJ7fJ0D0
食い気味で答えてきた可奈に、律子が「落ち着きなさいよ」と苦笑する。
人一倍歌を歌うのが好きなものの、普段の歌唱力は平均よりもグッと下。
そんな矢吹可奈は、だからこそ追加の枠は毎回ボーカルレッスン希望。
それは律子もキチンと把握している問題で、
なるべく彼女の希望に沿うようにこれまでも枠を用意してあげていた。
「可奈がボーカルレッスンにご執心なのは知ってるけど、ただ今月はいつもよりもちょっと、使える枠が減っちゃうかな」
「枠が……減る? 先生に急な予定ですか?」
「ううん。そういうのじゃなくてもっと単純な理由から」
だがしかし、今回は少しばかり事情が違うのだ。
律子が机に表を広げ、可奈に「見たら分かるわ」と促した。
そうすると可奈も不思議そうに、「なにかな〜?」なんて口ずさみながら覗き込み。
「……はれ? なんだかみんな、ボーカルレッスンばかり取ってません?」
「そうその通り、そうなのよ!」
まるでクイズに答えでもしたように、律子が「正解!」と言って可奈を指さした。
それから小さなため息を一つつくと、再び先ほどまでのような難しい表情を顔に浮かべ。
「どうも何日か前に固まって、予定の変更があったみたい。それも受けたのが私じゃなくてプロデューサーの方だったから――」
「あっ、ダブルブッキングってやつですか?」
「だったら話は簡単よ。予定をずらせばいいんだから」
言って、律子がレッスン表の上に人差し指を滑らせる。
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