4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/09/24(日) 19:02:37.78 ID:Hh3q65G80
訊いて、返事の代わりに差し出されたのはテーブルの上のお菓子である。
ポテトチップスうすしお味。
わざわざ「田中」と書かれた紙がセロハンで止められているソレを、
百合子の前までスライドさせて杏奈が言う。
「どうぞ」
「えっ」
「杏奈は平気。……琴葉さんも……困った時に、食べなさいって」
「そ、そうなの? 本人、ここに居ないけど……」
思わぬ杏奈の行動に、キョロキョロと辺りを見回す百合子。
その目はこのポテチの持ち主である少女の姿を探していたが、
あいにくと彼女はプロデューサーと一緒になって牛丼を食べに行っていた。
「で……でも杏奈ちゃん! そろそろお昼だし、やっぱりお菓子じゃお腹は膨れないし――」
そうして「私と一緒に、ご飯食べに行かない?」と続くハズであったその一言が。
「足りない、の……?」
なんて、杏奈が追加でテーブルの上をスライドさせたお菓子の山によって遮られる。
ひゅっと百合子が息を飲む。
「田中」と書かれた紙の横に、「高槻」「高山」「高木」と見事に「た」の付く面子が揃いきった。
「みんな、食べていいよって」
相変わらず杏奈はゲームの画面から顔を上げない。
そしてこの時百合子は理解した。
このテーブルに積まれたお菓子の山は誰かの取り置きなどでなく、
全て"杏奈の為に"ここにあるのだという事に。
「……ゲームしてると、お菓子貰える……不思議」
そう言って、杏奈はにこりと微笑んだ。
百合子が返事をする代わりに、彼女のお腹がぐぅっと鳴った。
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