293: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/28(木) 01:42:29.75 ID:7P004Us20
【プレゼントは真心込めて】
刹那、未来は小皿に乗せられたショートケーキに齧りついたのだ。
確かにそれは、今日が誕生日である彼女の為に俺が用意しておいた代物で、
つい先ほどプレゼントとして送った品であったのだが。
「実は、今日は俺も誕生日なんだ。だからこのケーキは二人で半分こってことに――」なんて冗談が奇行の引き金になった。
別に全部一人で食べて良いとこちらが言い出すその前に、
まるで犬っころのように直食いで、はぐはぐと口に入れた分だけ三角形を欠けさせる。
鼻の頭に生クリームがつくのも物ともせずに、
彼女は俺が渡したケーキに文字通り唾をつけてみせた。
そうして大きく喉を鳴らしたなら、
未来は食道に詰まったケーキを落とし込むようにトントントンと胸を叩く。
俺がお茶の入った湯呑を渡してやると、
顔を真っ赤にした彼女はひったくるようにしてソレを受け取り冷めた番茶を流し込んだ。
……一拍置いて一呼吸。
「プロデューサーさん」
「うん、なんだい?」
「ごめんなさい。ケーキ、分ける前に食べかけになっちゃいました」
そうして、少し涙ぐんだ表情の未来は申し訳なさそうに首を縮めると。
「……それでもいいなら、わ、分けっこしますか? 私の、食べかけなんですけど」
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