288: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/05/07(月) 20:13:10.92 ID:kXrrYojn0
【もしもの風景・30代ぐらいのPと志保】
「――そんなこと言われても困っちゃうな。俺はほら、気ばかり若い大人だから」
そう言うとプロデューサーさんは視線を窓の外へやった。
ここからだと伊織さんたちが遊んでいる劇場の庭もよく見える。
普段は泥臭いことを避けてるのに、今じゃサッカーボールを追いかけることに夢中になってはしゃぐ姿。
まだ、たったの十四だから。彼女とも一つしか違わないから、
本当だったら私だって、あんな風に無邪気な姿が似合うのだろう。
「でも、素敵だと思っていますから」
「オジサンをからかっちゃうのはよくないなぁ」
「私、からかってなんていません。オジサンだから尚素敵です」
竜宮城と、浦島。昨夜、弟に読んであげた絵本のことを思い出した。
相変わらずプロデューサーさんは窓の外ばかり眺めている。
……私は乙姫になろうなんて思っていない。物語に名前が出なくても結構だ。
だけど太郎にだって家族はいて、戻らない彼を想い続けていたハズの人だっていて。
そんな人が待ち人を諦めた時、選ぶ道はたったの二つしかない。
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