276: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/30(月) 13:04:58.16 ID:DgOgOi+x0
「それでそのぉ……。今日のお仕事はどうでしたか? プロデューサー、聴いてくれました?」
「勿論、途中からでも良いなら聴いてましたよ。始めた頃と比べたなら、トークも大分こなれて来たんでないかい」
「ホントですか? ……本当に?」
「ホントだとも。俺はよく嘘つきって人に言われるけどね、誰かを褒める時には嘘をつけない性分なの」
そうして、高木は運転しながらこう続けた。
「だからご褒美だって買ってあるのさ。雪歩、後ろ覗いてごらん」
「後ろ?」
「来る途中にちょいと冷蔵庫なんてこしらえてね。
いつものクーラーボックスに飲み物なんかを入れてるから、どれでも好きなの取んなさいな」
雪歩が言われるままに荷台を覗けば、なるほど、そこでは"いつものクーラーボックス"が振動に揺られてゴトゴト重そうな音を立てていた。
これはシュークリームやケーキ、プリンといったアイドルたちのおやつを運ぶのに使われたり、
今回のように大量の飲み物を保存するため常日頃から積まれている物で。
「こんなに沢山、どうするんです?」
疑問に思って雪歩が訊けば、高木は笑っただけで答えなかった。
彼には質問の答えを勿体ぶるという少々困った癖がある。
とりあえず、このまま真っ直ぐ事務所へ戻るつもりは無いらしい。
雪歩は即席の簡易冷蔵庫からお茶のボトルを選び出すと、居住まいを正して外の景色に視線をやった。
そうしてそのまま考える。
この車が一体ドコへ向かってるか? ボックスの中の大量の飲み物は何のためか――。
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