271: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/30(月) 12:55:32.55 ID:DgOgOi+x0
そして、その度にこのみは毒づくのだ。
顔には笑顔を浮かべたまま、心の中では唾を吐く。
「ええ、ええ、そうでしょうとも。学生ねぇ……小学生とか、その辺でしょ?」
===【わーきんぐ・パイロットの1】
「小学生とかその辺だよ。このジョークセンスにはお手上げだね」
そう言って男は、目を通し終わった書類をデスクの上に放り投げた。
頭の後ろで両手を組み、渋い顔のまま天井を見る。
「日頃の感謝にありがとう、サンキュー、だから『39プロジェクト』……社運を賭けた計画の名前がこんな理由で決まっちゃあ、
担当する社員のモチベーションアップには到底繋がらないと思わないかい?」
すると、彼から少し離れた場所に立っていた眼鏡の女性は振り返り。
「分かりやすさはイメージ戦略の基本ですよ、基本。なにより覚えやすいですし、
変に気取った名前をつけるよりかは余程宣伝効果も期待できます」
スケジュールを書き込むために置いてあるホワイトボードの前に立つと、マーカーを手に取りキャップを外す。
男は、彼女の一連の動作を何とはなしに眺めながら。
「でもさ、響きが悪いでしょうよ? 第一産休だなんて縁起でもない」
「産休じゃなくてサンキューでしょ! ……全く、難癖付けてる暇があるなら仕事の手を進めりゃいいのに」
「そいつがさっきも言った通り、とんとやる気が起きんのよね……」
「……呆れた! 名前のせいにしなくたって、アナタのやる気の無さはいつものことじゃあないですか」
心底「どうしようもないな!」といった表情でそう返すと、
彼女は両手を自分の腰にやり、当てつけのように嘆息した。
男が誤魔化すように口笛を吹く。
どうやら女性の言葉通り、彼はサボりの常習犯らしい。
340Res/273.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20